2010/01/21

株式会社ディー・エヌ・エー (2432)

1.はじめに
本レポートは株式会社ディー・エヌ・エー(証券コード:2432)について、投資家としての立場から同企業の企業価値評価をまとめたレポートとなる。分析に用いた各種数値については、分析時点(2010年1月上旬)における数値となっている。また、本レポートで用いている情報ソースは、同社のIRサイト、EDINET等から取得した有価証券報告書、各種決算短信レポートなどの一般からアクセス可能な情報のみからとなる。

2.要旨
株価 542,000円(2010年1月19日終値)に対し、理論株価は275,275円となり乖離率は-49%となる。尚、割引率は15%として計算している。同社の株価は2009年第2四半期の決算発表以後、ソーシャルゲームによる今後の売上期待で大きく伸びているが、現状の株価はその効果をおおよそ折りこんでいるように思える。

3.企業概要
会社名:株式会社ディー・エヌ・エー(証券コード:2432)
設立:1999年3月 設立
上場:2005年2月東証マザーズ上場。2007年12月東証一部に市場変更
事業概要:モバイル事業を中心に、Webコマース事業、ソリューション事業、その他(旅行代理店等)の事業を営む。
経営陣:2009年6月提出の有価証券報告書より
現代表取締役の南場智子氏が創業以来取締役に就任している創業者であると共に、同氏は議決権の14.83%を保有する第二位の株主でもある。また、社内取締役の中で春田氏、川崎氏、川田氏の3名が30代となっている。新興3市場(ジャスダック、マザーズ、ヘラクレス)における役員の平均年齢は53歳というデータ(http://www.nikkei.co.jp/needs/manabu/index_7.html)からみると、同社の役員は比較的若いと言える。

大株主:2009年6月提出の有価証券報告書より
創業時点から関わりのある、ソネットエンタテイメントと南場氏の議決権を合わせると31.71%となる。前年までは2者を合わせて1/3の議決権を超えていたが、ソネットエンタテイメントが株を少し手放した事により両社を合わせた議決権は1/3を割るようになっている。また、2008年の大株主と比べて4者(ユービーエスエイジーロンドンアジアエクイティーズ,クレディ・スイス、 ノムラインターナシヨナルピーエルシーアカントジヤパンフロウ、 モルガンホワイトフライヤーズエキュイティディリヴェイティヴ)が新たに入っている。


従業員数(連結):574人 (2009年6月30日時点)
連結における従業員の状況の推移は以下の通りとなる。グラフが示す通り、ソリューション事業を除き、従業員数は年を追う毎に増えているが、中でもモバイル事業に関わる従業員が急速に伸びおり、現在では関わる従業員の人数はWebコマース事業の倍近い。これは主に「モバゲータウン」に関わる業績がこの間に非常に伸びた事が原因と考えられる。また、2007年に旅行代理店業務に関わる会社を買収した事により、関連する従業員が増加したと思われる。また、現時点における給与水準は550万円程度となり、これは競合他社であるmixi(580万円)、GREE(620万円)よりも安い。

4.ビジネスモデル
同社ではモバイル事業を中心に展開しており、2009年3月期において1,344万人の会員を持つ「モバゲータウン」を主な基盤としている。モバイル事業における収益としては、アバター関連売上、広告関連売上、大手ゲーム会社と共に開発したアイテム課金型ゲームによる売上等が主な柱となる。
その他の事業としては、Webコマース事業としてPC,携帯向けショッピング&オークションサイトを展開しており、その他にもその他の事業としてインターネット旅行サービスを行う旅行代理店業務を行っている。
ただし、全体を通してみると利益の90%以上をモバイル事業から挙げており、他の事業が全体の業績に与える影響は非常に小さい。

モバゲータウン
「モバゲータウン」は2006年2月にサービスを開始した、主に携帯向けの総合ポータルサイトとなり、ゲーム(200種類上)、ECコンテンツ、SNS、情報系(ニュース、天気、乗り換えetc)、投稿系(小説、楽曲、動画etc)を提供するサイトとなる。2009年3月期において同社の売上の約半分を占めているサービスとなる。
サービス開始以降のモバゲータウンの会員数およびPVは以下の通りとなり、直近(2009年12月)の会員数は1,581万人、PVは380億となる。2007年8月頃より、会員数の伸びに比べてるとPVが伸びなくなっており、後で分析する通り2008年度に入るとモバゲータウンによる売上もピークに比べると減少していた。
しかしながら2009年10月にリリースされた内製ソーシャルゲーム「海賊トレジャー」「ホシツク」「怪盗ロワイヤル」を本格的に投入と共にPVが3ヶ月程度の間に倍近くに伸びている。同社によるとこれらのゲームは既存ゲーム比較してユーザ間のインタラクションの要素が多く、複数回プレイする傾向があるとの事である。PVの伸びからすると、ゲームの開発にあたってはユーザ間のインタラクションを増やす事でゲーム滞在時間、回数を増やす方策が非常に練られていたものと思われる。PVの増加ほどに会員数は伸びていないものの、PVの増加により同サイトにおける広告媒体としての魅力が今後さらに増すという可能性がある。
初期の頃のモバゲータウンのユーザの年齢層は10代が中心ではあったが、ユーザが増えるにつれて20代、30代のユーザも増えている。収益の観点から見ると、可処分所得の高い20代、30代のユーザが増える事は同社にとってプラス傾向と考える。また、同社によると課金対象となるユーザとしては、20代、30代が中心となっている模様である。

同社は2009年8月に、モバゲータウンにおけるAPI公開をサービス事業者・開発者に公開し、オープン化する事を発表している。オープン化したゲームの最初の発表は2010年1月を予定している。オープン化に際しては、今まで培ってきたノウハウを用いて、開発者に対して集客、カスタマーサビス、マネタイズ等に関するサポートも同時に行う予定である。オープン化に踏み切った理由としては、ゲームデベロッパーの強いニーズ、ユーザからのソーシャルアプリへのニーズおよび、内製するには内部のリソース不足といった事が説明されているが、上記で述べたようにPV数が伸び悩んでおり、その対策として外部リソースの活用する事でモバイル事業の魅力をさらに向上させるという施策に踏み切ったという理由も考えられる。2009年10月の内製ソーシャルゲームリース後のPVの伸びから考えると、外部開発リソースを利用したオープン化は外注費の発生による利益率の低下というデメリットも考えられるが、アバター販売、ゲーム内課金、広告収入といった点においては次なる成長への大きな可能性となりえる。また、オープン化されたゲーム等における課金については、開発会社7割:DeNA3割という割合でレベニューシェアを行うとされる。これにより、同社としては原価率が悪化する可能性があるものの、その影響以上に市場および売上を増やせるという見込みを持っていると考えられる。

ポケットアフィリエイト
モバゲータウンの次に売上の柱となっているのはポケットアフィリエイトとなり、全体の20%弱程度の売上を占めている。この事業では、アフェリエイトサービスを提供するASPを運営している。広告媒体としては、約50%強を他社メディアが占め、残りが自社メディアとなる。そのため、モバゲータウンの拡充により自社メディアの広告価値を挙げて行く事は、同時にポケットアフィリエイトの事業にも相乗効果を期待する事が出来る。

その他の事業
その他の事業としては、モバオク(携帯向けオークションサイト)、モバコレ(携帯ファッション通販)、ペイジェント(決済代行サービス)等を展開している。それぞれ全体の売上における割合としては1割前後と小さいものの、近年この中では決済代行サービスを展開しているペイジェント事業が一般加盟数拡大とともに売上を大きく伸ばしている。

海外展開
近年同社では、iPhoneのゲームデベロッパ向けコミュニティサイトを展開している米Aurora Feint社との資本業務提携、US等で携帯向けSNSを展開する米IceBreaker社を子会社、中国でモバイルSNSを展開するWAPTXを子会社化する等して海外展開を進めている。これは現在DeNAは多額の現金を保有しいる事と、以下で述べるように足下の業績が伸び悩んでいる事から、次なる成長の柱として海外展開を行っていると考える。

5.過去業績分析
過去五年間の主な指標は以下のテーブルの通りとなる。2005年から2008年にかけて、売上、利益共に倍以上のペースで伸びていが、2009年3月期は、それまでの成長度合いから比べると緩やかな伸びとなっている。これは、2006年から展開しているモバゲータウンが成功したことと、2008年頃からの同サイトにおけるPVの伸び悩みを反映した結果であると考える。
過去5年を通じて原価率は大きな変化がみられないものの、販管費率は年を追う毎に下落傾向になる。従業員増加等により販管費そのものは増加しているものの、それ以上に売上が伸びている為となる。これにより同社のビジネスは、販管費において人件費等の固定費(売上増によっても増加しない費用)の割合が比較的高い可能性が考えられる。また、それ以外の理由としては、同社の管理部門が無駄な費用をきちんと管理した結果であるとも言える。
キャッシュフローをみると、過去5年一貫してフリーキャッシュフローがプラスになっている事から、同社のビジネスは、拡大をするに辺りそれほど投資キャッシュを必要としないモデルである事がわかる。また、2009年3月期は財務キャッシュフローの支出が大幅に増加しているが、これは主に2008年11月から12月にかけて行った自社株買いによるよるものとなる。同社では2005年3月期、2006年3月期を通じておよそ80億円近く第三者割り当て等で株式を売り出しているが、2009年3月期の自社株買いは金額にしておよそこの時の40%に相当する額となる。自社株買い以前、同社では資産の70%(226億円)を現金が占めていた事もあり、この余裕資金を有効活用する手段として、自社株買いを行ったと考えられる。
(注:営業利益については、FCF算出用に科目を一部再構成しているため、有価証券報告書の値とは異なる。)

事業セグメント別の売上、営業利益について
事業セグメント別の売上と営業利益をまとめたグラフおよび表は以下になる。この表から、直近では売上の80%強、利益においては95%近くをモバイル事業から挙げている事がわかる。また、グラフからここ近年の同社の成長は殆どモバイル事業(モバゲータウン)の成功による事がよくわかる。
一方で、同社が発表している四半期毎による主要サービス別売上推移を調べてみると、2007年3月期の第4四半期以降、モバゲータウンにおける四半期毎売上の成長が止まりつつある。これは先に述べた同時期におけるPV数の伸びが停滞している事と関連があると思われる。その為、ここ数年モバイル事業と共に同社の業績は大きく成長してきていたが、足下の売上推移を見る限り、今後の成長については注視が必要な状況であると考える。
また、同社ではモバゲータウンのオープン化およびソーシャルゲームのリリースを2009年後半に行っているが、これは上記で述べた足下の状況から現状のままでは成長の限界があるという判断のもと、今後の成長政策として実施したとも考える事が出来る。2009年10月以降のPV推移を見ると、この施策は今のところ成功しているように思われ、引き続きPV増加、および加入者数の増加が続けば、さらなる成長も見込まれる。



資本効率について
過去5年のROICは以下の表の通りとなる。また、同社は現預金の保有額が非常に大きい事から、現金を計算に入れない資産ベースのROICが非常に高くなる。負債ベースのROICをみると、売上増と共にROICも大きく増えている。この事からも、同社のビジネスは、売上が

ROICツリー分析
DeNAの資本効率を同業他社と比較する為にROICツリー分析を行った。ROICツリーの詳細については、株式会社グリーのレポートを参照の事。

6.資本政策の分析
・配当
同社では2007年3月期より配当を行いようになり、それ以前は内部留保の拡充を優先して配当を行っていなかった。2007年3月期は、モバイル事業の成功により売上、利益、フリーキャッシュフロー共に大きく伸びていった時期でもあるので、その一部を株主に還元するという事であったと考えられる。配当性向としては10%を目安にするとされている通り、およそ10%程度である。

・自社株買い
過去業績分析で述べたように、2008年11月から12月にかけておよそ30億円近くの自社株買いを行った。自社株買いを行った理由としては、余裕資金の有効活用であると思われる。また、株価推移から判断すると、近年ではこの自社株買いを行った時期から株価のトレンドが反転上昇している。

・資金調達
2009年3月末において、現金を240億円近く保有しており、これは全資産の65%に相当する。また、現時点で有利子負債は保有していない。また、投資キャッシュフローから見るに、同社のビジネスは大きな投資キャッシュを必要としていない。このことから、当面の資金調達としては、大規模な企業買収等を行わない限り自己資金で十分に賄えるものと考える。

7.将来動向 (シナリオの前提)
■外部環境
・インターネット普及率
総務省による平成20年「通信利用動向調査」によるとインターネットの利用者数は9,091万人となり、人口普及率は75.3%となる。また、年齢別に見ると13〜39歳までは利用率が95%を超えており、この年齢層がDeNAのユーザーの大部分を占めていると考えられる事から、インターネットそのものの普及率は頭打ちになると想定する。

・携帯普及率
同調査によると、携帯の個人利用率は全体で75.4%、世代別の利用率としては、20代〜40代で90%を超えている。携帯についてもDeNAがターゲットとするユーザはほぼ携帯が普及しているといえる。

・インターネット広告費
電通総研によると、2008年インターネット広告費は6983億円、うちモバイル広告費は913億円となっている。インターネット広告費自体は伸び悩んでいるが、モバイル広告は前年比147%となった。この事から、広告費としては景気後退の影響を受けるものの、モバイル向け広告費市場は今後もゆるやかに成長するものと仮定する。

■内部環境
・資本コスト
株式コスト:自分勝手割引率として15%を用いる。
有利子負債コスト:有利子負債は保有していない。
WACC:株主コスト=WACCとなり、WACCは15%となる。

・売上高
2010年3月期の中間期業績では、予想よりも芳しくないものの、2009年10月以降のソーシャルゲームリリース後のPV増加に伴った売上があると想定し、2010年3月期の売上予想は会社発表に合わせる形とした。また、モバゲータウンのオープン化に伴い、有望なコンテンツが増えると仮定し、それによるユーザ数増加、PV増加を伴った20%〜30%の売り上げ増が2012年頃まで続くと想定する。ソーシャルゲームリリース後、PVは急速に伸びているが、会員数の増加はそれほどでも無い事から、ここ最近の会員数の増加率等を考え、会員数そのものがこれから大幅に増加するとは考えにくいとした。
また、Webコマース事業については、過去の水準を踏まえ、モバゲータウンの成長に引っ張られる形で2012年ごろまで20%程度の成長と仮定した。
その他の事業については、旅行事業等が不況等の影響を受けると仮定し、過去の水準からみてやや保守的に8%程度の成長と仮定する。
また、海外展開からの売上は今回のバリュエーションでは考慮にいれていない。

・営業費用(売上原価・販管費)
過去2年の売上原価の詳細をみると、約半分が広告媒体費となっており、商品売上原価は原価の1%程度、労務費は4.5%程度である。ただし今後はオープン化に伴うレベニューシェアの影響のため、同社としての売り上げ原価率は悪化する傾向にあると想定する。
販管費については、今までの傾向から事業の拡大とともに販管費率がある程度下落していくと予想するが、サービス拡大等による人員増加、販促費、広告費等の増加を見込み、販管費率は30%弱程度と想定する。

・減価償却費
ソフトウエアおよびサーバが資産となるので耐用年数は5年とする。

・設備投資
2012年頃までは会員数の増加とともに積極的に設備投資を行うが、会員数増加率が逓減していくとともに、設備投資額も減少して行くと想定。また、M&A等については想定に入れていない。

・長期成長率
長期成長率は0.5%を仮定する。

・非事業用資産
現預金を除き、非事業用資産は保持していない。

・実効税率
実効税率は、法定実効税率と殆ど差がないとの事から、実効税率として40.8%を用いる。

8.バリュエーション 
2010年1月19日の株価542,000円
上記各シナリオを数値に落とし込んだ結果、理論株価は以下のようになった。
理論株価:275,275円 乖離-49%

9.IR関連
同社のIRサイトには、決算短信、決算説明会、モバゲータウンの会員数、PV等の月別資料がダウンロード出来るようになっており、多くの資料はここから取得可能である。正し、有価証券報告書のみは、EDINETのサイトからダウンロードする仕様となっていて、少々不便であった。
また、同社のIR部門に対して、設備投資、従業員数、今後の見通しなどについて伺った所、一通りの回答を頂く事が出来た。主なQAとしては以下の通り。
ユーザ層として20代位以上が比較的多いが、実際に課金が発生しているユーザの層は?
20〜30代のユーザが多い

ユーザ一人当たりの単価は伸びているか?
10月のソーシャルゲームリリース後、ユーザ当たりの単価は増加している。

Q.PVの増加に比べて新規会員数の伸びは少ないが、今後、ユーザ数を増やす施策を何か考えているか?
12月以降からTVCMを再開している。ただ、ユーザ数を増やす事も大事だが、既存会員のアクティビティを増やす事も重視している。

今後の設備投資の見通しは?
業容に合わせて設備投資をしていく。現在、明らか出来るような大規模な設備投資は予定していない。

240億あるキャッシュの使い道は?
現在検討中。

2009年第2四半期に12億円近く有価証券に対して投資を行っているが、これは何に使ったものか?
中国でモバイル向けSNSを展開するWAPTXを子会社化する為の支出となる。

社内からみた、競合他社と比較した自社の強みはどう理解しているか?
mixiはリアルを含むが、DeNAはバーチャルに特化した所が異なる。GREEとは、サービス全体における総合力というところで差別化していく。

10.まとめ
株価 542,000円(2010年1月19日終値)に対し、理論株価は275,275円となり乖離率は-49%となる。同社は過去数年にわたってモバイル事業を中心に業績を大きく伸ばしてきているが、足下の業績を見ると2007年3月期の終盤から売上成長がとまりつつある事がわかる。この状況の下、モバゲータウンのオープン化およびソーシャルゲームのリリースは、ユーザ間のアクティビティを増加する事で、同サイトの広告媒体としての魅力向上および、アイテム課金を通して収益力を向上させていくための施策であると考える。現時点の情報では2009年10月から12月にかけてPVは急激に増加しているが、ユーザ一人当たりから発生するPVには限りがあるので、中長期的には会員数の増加が無い限り、PVの成長が持続していくのは難しいのではないかと考える。
理論株価は株主コストを15%と設定している事もあり、割高になっているが、この将来予測の基で理論株価と株価が一致するように株主コストをゴールシークすると株主超すとは約8%となる。ブルームバーグにおける同社のベータは0.777である事から、リスクフリーレートを2%、リスクプレミアムを5%と仮定すると、CAPMを用いた株主コストは5.9%となる。これは、CAPMを用いると、現状の株価はやや割安となる。
株主コストをどう設定するかは投資家によって異なるが、同社におけるGREE、mixi等の競合の存在、モバゲータウンオープン化による今後の影響、海外展開の正否など今後のリスク要因(もちろん上ぶれリスクも含む)を考えると、実際の株主コストはCAPMから求められるものよりも、高くなるであろうと考える。
株価としては2009年10月27日の第2四半期決算発表以降伸びており、この時点から比べるとおよそ3ヶ月弱で倍程度になっている。この決算発表時に、ソーシャルゲームによる売上と、PVの大幅な伸びが報告されており、それが株価に反映していると考える。ただし、この事により今後数年の同社の売上が30%程度伸びていくと仮定した場合のキャッシュフローから考えると、現状の株価はその伸びを折り込んでいるように思える。その為、現時点で同社が予測している以上に売上、利益の伸びが達成されない限り、今以上に株価が大きく伸びるのは難しいと考える。

2010/01/12

The danger of the bounce

The danger of the bounce Jan 7th 2010

金融危機後、先進国、新興国共に、低金利と政府支出拡大による刺激策が行われているが、これが新たなバブルを生むのではないか?という議論を行っている。ざっくりとまとめると以下の通り。

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金融危機後、先進国、新興国の政府は金利を下げて投資家にリスクマネーを提供するように誘導している。しかしこれが新たなバブルを生み出すのではないか?

先進国の株式市場、住宅市場を分析すると、株については高水準のピークに比べては安いが、歴史的な長期水準を比較すると高い価格となっている。また、家賃利回りからみた住宅価格も、アメリカではフェアバリューだが、他の国では30-50%割高という指摘もある。さらに、借入に関わる信用拡大のプロセスは現在見られず、この事から熱狂を伴うバブルの状況ではないと判断する。

また、新興国では将来の成長期待から大きく買われている。市場拡大、低金利、通貨安を伴えば、新興国でバブルが生まれると想像するのは容易かもしれないとしている。ほかにも金相場はバブルではないかという分析もある。政府が通貨安を誘導する事で、相対的に金が上昇している。但し、金相場は底値から4倍近く、金利を生み出す資産でもないので価値評価は難しい。

一方、世界経済は景気刺激策に過度に依存しすぎているという指摘もある。自動車、住宅などの売れ行きは補助金に依存している。最終的に、景気刺激策が続くかどうかは、政府が低金利による国債発行を何処まで行えるかどうか?という事に依存しているようだ。また、量的緩和策によって中央銀行のバランスシートは急速に拡大している。市場はいつまでも政府の財政赤字に対して寛容ではないが、政府の対応はなかなか進まないものである。

現在の政府による並外れた経済刺激策は、国債の発行金利が低いままである事に依存しているが、成長予測が低かったり長期インフレ率が低いと期待されるならば、市場は国債を買う事は正しい。一方、この予測の元では過去の水準よりも高い値を付けている株や不動産は買うべきではない。おそらく、この矛盾は近いうちに解消されるであろうが、それは新たな混乱の引き金になるかもしれない。
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政府の刺激策は国債を低金利で発行出来るかどうかに依存している、という点はキャッシュの流れをルックスルーするとその通りではあるが、有意義な視点だと思った。また、最後の国債市場、株式市場、住宅市場における矛盾については、どの市場にて矛盾が解消されるかは分からないけれど、こういう矛盾を市場が抱えているという事は覚えておいた方が良さそうだ。

2010/01/10

グリー株式会社(3632)

1.はじめに
本レポートはグリー株式会社 (証券コード:3632)について、投資家としての立場から同企業の企業価値評価をまとめたレポートとなる。分析に用いた各種数値については、分析時点(2010年1月上旬)における数値となっている。また、本レポートで用いている情報ソースは、同社のIRサイト、EDINET等から取得した有価証券報告書、各種決算短信レポートなどの一般からアクセス可能な情報のみからとなる。

2.要旨
株価 5290円(2010年1月7日終値)に対し、理論株価は2,826円となり乖離率は-47%となる。同社では2008年、2009年に掛けて業績が大幅に上昇しており、また、株価も2008年12月の上場以降、比較的堅調に伸びている。業績が伸びているが、上場直後でかつ業績が大きく伸びている段階のベンチャー企業である事、業界の先行きがやや不透明等から、やや高めな割引率(15%)を用いた結果、現状の株価は割高となった。

3.企業概要
会社名:グリー株式会社(証券コード:3632)
設立:2004年12月 設立
上場:2008年12月マザーズ上場。
事業概要:インターネットメディア事業を展開し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「GREE」の運営を行う。
経営陣:2009年9月提出の有価証券報告書より
創業者であり代表取締役である田中氏が発行済株式の約60%を所有するオーナー社長である。また、社内取締役である田中氏、山岸氏、藤本氏、青柳氏ともに30代前半となり、非常に若い経営陣であると言える。一方、社外取締役および監査役は社内取締役の4名よりも10歳〜20歳近く年上であり、若い経営陣をサポートする役割であるように見える。

大株主:2009年9月提出の有価証券報告書より
経営陣のところで述べた通り、創業者である田中氏が議決権の約60%近くを保有する大株主となっている。また、上場して間もない事もあると思われるが、上位10位までが持つ株式で、議決権の約90%近くを占めている事も特徴であると考える。
(注:同社は2009年9月30日に1:2の株式分割を行ったので、現時点での株数は以下の表と異なる。)

従業員数(連結):102人 (2009年6月30日時点)
2009年6月期中に従業員が28名増加しており、これは業容拡大による新規採用となっている。また、年間平均給与は約620万円となる。この平均給与を競合(DeNA,mixi)と比較すると、DeNA(約550万円)、mixi(約580万円)よりもやや高い給与水準となる。

コーポレートメッセージ:
コーポレートメッセージとして「インターネットを通じて、世界をより良く」という文言が同社のWebサイトに明記されている。

4.ビジネスモデル
SNSサービス「GREE」は、日記、コミュニティ、メール等のユーザが主体となって情報を発信出来るプラットフォームを提供している。また、これに加え、モバイル環境に特化したSNS連動型ゲーム、FLASHゲーム、占い、辞書等のコンテンツの独自開発、提供を行う。
「GREE」開設当初はPC中心の提供が中心ではあったが、2006年11月より開始したKDDIとの事業提供を通じ、現在では携帯経由でのアクセスが全体の約98%を占めている。以下の表は、KDDIとの事業提携直前の2006年11月と2009年9月におけるGREE会員数、モバイル、PCのページビューをまとめたものとなる。この表からもモバイル経由でのPVが大きく伸びている事が分かる。

同社の収益構造としては「広告メディア収入」、「有料課金収入」の二つから構成されている。それぞれの内容は以下の通り。尚、携帯キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)からの売上が全体の79%を占めており、モバイル各社を通じた有料課金収入が同社の収益の柱となっている事が分かる。

グリーにおけるゲームについて:
過去業績分析で示す通り、同社の売上はモバイル向けサービスが大部分を占める。この中でも、非常に大きな要素となっている部分が、ゲーム内課金、アバター販売になる。ゲームとしては自社内で内製した「釣り★スタ」「クリノッペ」「体験ドリランド」「ハコニワ」等が用意されている。基本的にこれらは無料で利用出来て、かつユーザ間のコミュニケーションが行えるようになっている。同社による課金機会としては、ゲーム内のアイテム購入、アバターのアイテム購入といった他のユーザとの差異化を行うタイミングとなる。また、これらのゲームでは定期的に「大会」「イベント」等が開かれており、ユーザ間の交流およびアイテム購入を促進する仕組みが用意されている。無料ゲームにてユーザを引きつけ飽きさせず、その後ゲーム内にてユーザに課金出来るような仕組みを作り出しかつ運営出来ている所が同社の大きな強みである。

会員数、PVの成長率について:
以下の表は、2006年1月から2009年6月までの各半年毎の「総会員数」「モバイル経由PV」「PC経由PV」の成長率をしめした表となる。これを見ると、2006/07〜2006/12におけるモバイルPV成長率が非常に大きいが、これは10月から12月に掛けてPVが7千万から2.2億に伸びている事が原因となる。その為会員数、PV共に順調に成長を始めたのは2007年以降となる。また、会員の成長率よりもモバイルPVの成長率の方が大きい事から、モバイルの利用率も高まっていると思われる。一方、PCのPV成長率はモバイルの成長率に比べると見劣りする。この事からも同社ではモバイルに注力してる事が伺える。
2007年前半以降、総会員数成長率、モバイルPV成長率が逓減しており、これが2009年前半に大規模な広告宣伝キャンペーンを行った理由であると思われる。この結果、2009年前半に再び成長率が上がっており、広告宣伝の効果が確かに現れていると見て取れる。但し、大規模な広告を行ったにも関わらず、会員数、モバイルPVの成長率は2008年前半と同じ程度となる。PC経由のPV成長率が伸びているが、母数が小さいので全体としてはあまりインパクトがない。
今後も引き続き10%を超える会員数、モバイルPV成長率を維持出来るかは、サービスの質の向上、効果的な宣伝広告といったポイントがキーとなると考えるが、過去の推移を見る限りは少々厳しい状況のように思える。

グリーとDeNA間における訴訟について:
2009年9月25日に同社は、著作権侵害で「モバゲータウン」を運営するDeNAを提訴している。これは、GREEが展開する「釣り★スタ」とDeNAが展開する「釣りゲータウン2」が酷似しているからという理由である。この件を同社のビジネスモデルから考えると、モバイルアクセスが収入の柱となっている事から、グリーが同様なサービスを提供している競合他社について非常に敏感になっている事を表していると考える。
但し、ゲームとSNSを組み合わせたモデル自体はDeNAが「モバゲータウン」として2006年2月にサービスを開始しており、2007年6月にリリースされた「釣り★スタ」を初めとするグリーのサービスモデルの方がDeNAの後追いとなる。

5.過去業績分析
過去5年間の主な指標は以下のテーブルの通りとなる。売上高、営業利益、純利益ともに2008年6月期に大きく成長している。2008年6月期に売上、利益共に大きく成長出来た理由の一つとしては、2007年5月にリリースした「釣り★スタ」、同年7月にリリースした「踊り子クリノッペ」および、2007年6月に行ったモバイル向けGREEのリニューアルと共に登場した「アバター」等によりモバイルの利用率が高まった為と思われる。これらの「釣り★スタ」、「踊り子クリノッペ」、「アバター」は無料で使用する事が出来るが、有料課金サービスを用いる事で他のユーザとの差別化を行う事が出来る。この、「ゲーム内アイテム課金」が2008年6月期より大きく売上、利益をのばせた最大の理由であると考える。
2009年6月期の販管費の増加そのものは、231%増と大幅に増えている。これは主に広告宣伝費、人件費、地代家賃等の増加である。特に、広告宣伝費については、2009年4月〜6月に掛けて大幅な広告キャンペーンを行っている。この期間に用いた宣伝広告費は11億円以上に上り、これは同期間の売上の約21%、営業利益の約42%に相当し、2009年1月〜3月期と比べても倍額以上となる。日経ビジネスオンラインの記事(http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20091022/207799/?P=5)によると、これらは上場後の資金余裕があった為に広告費を用いたのではなく、広告宣伝費の費用対効果を細かく管理しながら広告を行った模様である。
また、財務的には、現時点では大きな問題となりそうな点は見当たらない。売上高の75%に相当する現預金を持っている事から、これらの資金をどのよう効率的に用いるかが今後の課題となる。

(注:営業利益については、FCF算出用に科目を一部再構成しているため、有価証券報告書の値とは異なる。また、同社は2008年12月に上場している事と、2009年10月に株式分割をしている為、2009年6月期の一株あたり純資産、純利益は単純に前期との比較は出来ない。)

同社の販売先は以下の通りとなる。2009年6月期において携帯キャリア3社からの売上が大きく伸びており、売上高のの79%を占める。また、モバイルからのアクセスが「GREE」のPVの98%を占めている事から、モバイル向けサービスの展開が同期における成長の源泉となって来た事が分かる。
また、アフェリエイト広告事業を行っている株式会社アドウィエイズからの売上を含めると、全体の90%近くをこの4社から売り上げている。

資本効率について
過去5年のROICは以下の表の通りとなる。また、同社は現預金の保有額が非常に大きい事から、資産ベースのROICの計算にあたり現預金の一部を投下資本に計算している。2008年6月期に売上、利益が大きく改善した事により、ROICが大幅に改善している。2008年12月の上場による資本増加の割合に比べて、営業利益率の伸びが低かった事から、ROICは低減している。但し、その点を考慮しても非常に高いROICであると言える。

ROICツリー分析
グリーの資本効率を同業他社と比較する為にROICツリー分析を行った。比較対象としては、ミクシィ、DeNAを選択した。この中ではグリーが最も高いROICとなっている。これは他社と比べて売上原価率、販管費率共に優れた結果となっている。これは、グリーではゲームの制作を内製で行っている事が一つの理由であると考える。
投下資本回転率は3社共に大きな違いはない。ただ、3社に共通する点としては非常にキャッシュリッチな状況にあり、売上の60%〜90%にあたる現金額を保有している。3社共にこれらの現金をどのように活用して行くかは、今後の大きな課題である。


7.将来動向 (シナリオの前提)
■外部環境
・インターネット普及率
総務省による平成20年「通信利用動向調査」によるとインターネットの利用者数は9,091万人となり、人口普及率は75.3%となる。また、年齢別に見ると13〜39歳までは利用率が95%を超えており、この年齢層がグリーのユーザーの大部分を占めていると考えられる事から、インターネットそのものの普及率は頭打ちになると想定する。

・携帯普及率
同調査によると、携帯の個人利用率は全体で75.4%、世代別の利用率としては、20代〜40代で90%を超えている。携帯についてもグリーがターゲットとするユーザにはほぼ携帯が普及しているといえる。

・インターネット広告費
電通総研によると、2008年インターネット広告費は6,983億円、うちモバイル広告費は913億円となっている。インターネット広告費自体は伸び悩んでいるが、モバイル広告は前年比147%となった。この事から、広告費としては景気後退の影響を受けるものの、モバイル向け広告費市場は今後もゆるやかに成長するものと仮定する。

■内部環境
・資本コスト
株式コスト:上場直後の企業という事もあり、自分勝手割引率としてやや高めの15%を用いる。
有利子負債コスト:有利子負債は保有していない。
WACC:株主コスト=WACCとなり、WACCは15%となる。

・売上高
2010年6月期の売上予想は会社発表に合わせる形とした。代表取締役の田中氏によると、将来的にグリーの利用者を2,000−3,000万人を目指すとの発言がある。直近の2010年6月期第一四半期決算によると、2009年9月時点の利用者は1,512万人となり3ヶ月で252万人増えた。よって、多少楽観的ではあるが3〜4年以内に2,500万人に程度には達すると仮定した。その後、加入者の伸びは逓減していくと想定する。売上についても、IRへの質問を元に、有料課金、広告収入共にあまり不況の影響を受けずに加入者の伸びに応じて伸びて行くと想定した。

・営業費用(売上原価・販管費)
売上原価の約85%が労務費と賃借料となっている。これらは加入者増、サービス拡充に伴って増えて行く事が予想され、対売上比で徐々に悪化して行くと想定。
販管費については、今後、ユーザ増加に伴う経費、広告宣伝費等が予想される事から、対売上比40%程度の経費がかかると想定する。

・減価償却費
ソフトウエアおよびサーバが資産となるので耐用年数は5年とする。

・設備投資
2012年頃までは会員数の増加とともに積極的に設備投資を行うが、会員数増加率が逓減していくとともに、設備投資額も減少して行くと想定。M&A等については想定に入れていない。但し、売上、利益等に比べて設備投資額が非常に小さい事から、設備投資額がバリュエーションに与える影響は小規模となる。

・長期成長率
長期成長率は0.5%を仮定する。

・非事業用資産
現預金を除き、非事業用資産は保持していない。

・実効税率
過去5期における実効税率の平均が46.4%だった事もあり、この値を用いる。

8.バリュエーション 
2010年1月7日の終値5,290円
上記各シナリオを数値に落とし込んだ結果、理論株価は以下のようになった。
理論株価:2,826円 乖離-47%

9.IR関連
同社のIRサイトには、決算短信、新規公開目論見書、有価証券報告書がダウンロード出来るようになっており、基本的な情報はここから取得出来るようになっている。また、同社のIR部門に対して、設備投資、従業員数、今後の見通しなどについて伺った所、一通りの回答を頂く事が出来た。いくつか質問の回答に時間がかかった点もあったが、誠実に答えて頂いたと思う。
主なQAとしては以下の通り。
Q.ユーザ層として30代以上が比較的多いが、実際に課金が発生しているユーザの層は?
A.ユーザ層とそれほど変わらず、30〜40代のユーザが多い。

Q.ユーザ一人当たりの単価は伸びているか?
A.ユーザの伸びに応じてユーザ間のコミュニケーションも増えている事から、比較的堅調に単価も伸びている。

Q.携帯キャリアからの売上が80%、広告収入が20%となっているが、今後のこの割合の見通しは?
A.直近において大きく変化する見通しは無い。また、ユーザ数に応じて、有料課金収入、広告収入共に伸びている。その為、不況の影響をもろに受けているという事は無い。

Q.今後の設備投資の見通しは?
A.特段大きな設備投資は予定していない。事業拡大に応じて人員は見合った規模にする予定はある。その際、競合他社が200〜300人規模なので、それは一つの目安となる。

Q.100億円あるキャッシュの使い道は?
A.現在検討中。

Q.社内からみた、競合他社と比較した自社の強みはどう理解しているか?
A.1、内製にてゲーム&SNSを組み合わせて運営する事が出来る体制を持っている事。2、他社と比較して可処分所得が高い30代以上のユーザ層が比較的厚い事。

10.まとめ
株価 5,290円(2010年1月7日終値)に対し、理論株価は2,826円となり乖離率は−47%となる。同社では2008年6月期以降、急速に伸びており今後もしばらくは業績が伸びて行く事が予想されるが、それを考慮に入れても現時点では割高な結果となった。また、理論株価と株価が一致するように株主コストをゴールシークすると、株主コストは9.7%となる。同社は上場後間もないため、Web上からベータを取得する事は出来なかったが、おそらくCAPMで計算した場合の株主コストは9%前後になると思われ、その意味では現状の株価はおよそフェアバリューとも言える。但し、ベンチャー企業であり上場後間もない企業である事、SNS業界における個人認証に関わる規制等の問題を含めて今後の先行きが見通しにくい業界である事から、現実の株式コストは10%よりも高いと想定する。
また、同社は2008年12月の公募増資により約36億円に及ぶ財務キャッシュフローを取得しているが、2009年6月期のフリーキャッシュフローは約56億円となり、公募増資の約1.5倍ほどのキャッシュを稼いでいる。結果的に2009年6月期に業績が大幅に上昇しているからという結果論ではあるが、キャッシュフローだけでみると、公募増資を行わなくても同社が必要な投資キャッシュフローは十分に稼げている。そこで、今後、如何にして株主資本を有効に活用して行くか?という事が同社にとって大きな課題になるであろう。
自分勝手割引率を用いた場合、同社の株価は割高であるが、ビジネス自体は優れているといえる。特に、サイト自身のオープンはミクシィとほぼ同時(2004年2月)にも関わらず、一端ミクシィやDeNA(モバゲータウン)に会員数、サービス内容に大きな遅れをとっていた。その後、2007年後半以降にかけてモバイル向けサービスに特化する事で急速に業績を改善、拡大してきた同社の経営力は非常に高く評価出来る。その事から財務的な同社の価値は、モバイル経由によるユーザ課金、広告収入ではあるが、本質的な価値は代表取締役の田中氏を初めとする同社の経営陣および、各種サービスを企画、実装、運用するスタッフの実行力にあると考える。