2010/04/06

シェル エネルギーシナリオ 2050 (その2)

シェル エネルギーシナリオ 2050 (その1)の続きです。

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3 Blueprint (青写真)
Blueprint - overview at glance (ブループリントにおける概要)
ブループリントシナリオでは、利害による新たな連携に関するダイナミクスについて述べる。これらのダイナミクスは、統一した目的について反映させる必要はなく、供給サイドの懸念、環境に関する利害、および関連した起業チャンスの組み合わせにより形成される。ライフスタイルや経済的発展についての懸念がある世界では、先進国、発展途上国ともに行動を促すような新たな連立が形成される。この事により世界は、供給、需要および環境圧力について同時に対応出来る為の状況が出来上がり、これらの問題について迅速に対応するようになる。

これは世界的な他利主義によって行われた訳では無い。最初は、地域に根付いた個人がイニシアチブを取るようになる。これらの運動は次第に政府と結びつき、ばらばらであった各基準について調和をとれた形にするように促す力となり、また、生まれつつある政治的イニシアチブを活用できるようになる。実際、継ぎはぎ状態となっている様々な政策の現状が、ビジネス側から見ると明瞭な政策を求めるためのロビー活動を行う切掛けとなる。

その結果、マーケット主導による有効的な需要サイドの効率性についての基準はより素早く出来上がり、マーケット主導のCO2のマネージメント手法が広がる。CO2取引市場もより効率的になり、CO2価格はより早い段階で高くなる。エネルギー効率化に関する改善と、電気自動車の大衆化が加速される。大気中におけるCO2濃度の成長率は、環境に対してより継続性のある行動等により抑えられる事となる。

3.1 Starting at the grassroots (草の根運動からの始まり)
国際団体がどのような環境政策であるべきか、またどの政策が現実可能であるか議論したり、多くの国々がエネルギー安全保障について懸念を持っている間にも、行動を起こす為に新しい連携が生まれる。異なる産業に属する企業が、エネルギーに関する共通の利害の元に集まるようになる。街や地域に基づいたその他の連合では、自らの運命を自らの手で治めるようになり、自らのエネルギーの将来についてのブループリントを作るようになる。個人は、難しいエネルギー問題に対して効率的に責任を政府以外の幅広い機関に対して委任するようになる。成功に対する報酬は、キャッシュ、投票、正当性といった物となる。

そのプロセスは最初ゆっくりとしたものであり、2歩進んで1歩戻るようなものである。初期の頃は理性的というよりは政治的な日和見主義的な状態である。多くの団体は新しい政策に対する回避策、弱体化、抜け道等を探し、代替エネルギーに対するインセンティブを設けようとする。規制の見通しが不確実である事は、新たな開発に対する妨げになる場合もある。しかしながら、成功したベンチャー企業も生まれ、停滞したプロセスは、風力、太陽発電といったよりクリーンなエネルギー開発へ大きく結びつく。

消費者や投資家が、変化は痛みを伴う必要があるわけではなく、むしろ魅力的だと理解するにつれ、変化に対する恐怖は和らぎ、より大きな政治的行動も可能なようになる。エネルギーやCO2に関連した税制、インセンティブは、より早い時期に行動に移される。その結果、ブループリントシナリオにおいても、大きな変化と政治的な混乱があるものの、世界経済は強いままとなり、より少ないエネルギー消費へと重要な変化をしていく。

21世紀の初頭において、世界における先進的な都市では、効率的なインフラ開発、渋滞の対応、統合された暖房・エネルギー供給に関する優れた実践方法について共有される。幾つかの国々においては、自らの必要性とエネルギーの効率性の為に、グリーンエネルギーへ投資を行う。最初は、大気や水道の質が低下した事による抗議といった危機に対する自覚がこうした変化を引き起こす。より透明性が増した世界においては、知名度の高い地元の関係者がすぐに全国的に影響力を持つようになる。個人によるイニシアチブの成功が、市長、地方自治体に対する信任状となり、国家・国際レベルにおいてもそのトレンドを追いかけるようになる。国家および地方における努力は、お互いに協力するように、またそのことがお互いの努力を増幅するように働き、この徐々に国際的議論の性質を変えていくようになる。

人々の認識は、継続的な経済発展が環境変化に結びつくというジレンマに向かうようになる。経済向上に対する追求と平行して、大気の質や地域環境に対する懸念 - 気候変動や環境に優しい企業家精神という事ではなく- が中国、インド、インドネシアといった国々の行動を最初は推し進める。しかしながら徐々に人々は、水不足や沿岸地域の天候といった、不規則な天気の振る舞いと広い意味での気候変動との意味合いを結びつけるようになる。さらに、途上国における成功した地域では、2012年に期限が切れる京都議定書に置き換わる新たな国際条約のクリーン開発条項により開発が可能になった、新たな環境に対して配慮した設備開発に対する投資を呼び込む事で、経済を刺激する。これらの動きは先進国において、よりコストがかかる自国へのプロジェクトの代替として、途上国における排出量削減プロジェクトに対する投資を可能にする。

ブループリントシナリオにおいて、これらの事を可能にする要素は、炭酸ガス排出に関する取引枠組みに基づいたCO2に対する価格付けメカニズムの導入である。この枠組みはEUで始まっており、徐々に米国、後に中国でも導入されるようになる。この取引の仕組みは、クリーン代替手段、再生可能エネルギー、炭酸ガス捕獲、保存技術等を開発する産業周辺に活気を与える。さらに炭酸ガスに対する与信は、特に再生可能エネルギーを開発する者に対する売り上げ増に繋がり、投資に対する不確実性を減らすようになる。

3.2 Paths to alignment (連携への道筋)
国際的な枠組みへの参加者が十分なほどに増えたのは、他利主義が広がった事に支えられたわけではない。むしろ、地域的、国家レベルで始まった新たなイニシアチブが、一部は多国籍企業からの圧力もあるが、より広い変化の為の動機となる。企業は、地域、国家レベルにおける継ぎ接ぎだらけの規制の結果である非効率で不明確な状態を避ける為に、明確で調和の取れた規制について強力に議論を進める。

米国政府は一般および産業の両方からの圧力に対応し、新たな3つのイニシアチブにも基づくエネルギー効率化に向けて重要なステップを踏み出す。それは、石油販売において採掘から自動車走行に至までの炭酸ガス評価、米国平均燃料経済(the U.S. Corporate Average Fuel Economy (CAFE) standards)における基準を徐々に上げていく事 - これは自動車の最低燃費基準を定めており、これを2020年までに欧州における2007年レベルにする、燃費の悪い車に対して課税をする事でより燃費の良い車への購入を促す、という事から成り立つ。一方欧州では、すでに重要な意味を持つ燃料税を追加するのではなく、むしろ排出量の非常に大きな削減の為にCO2排出量に対してより厳しい制限をかける。

中国、インド政府は国内、経済成長を支えかつ、気候変動、エネルギー効率に関する懸念による国外からの激しい政治的圧力の間でバランスをとる事を試みる。国際的な枠組みに参加する見返りとして、両国は環境技術の移転やエネルギー効率に関する投資を促進させる為の合意を取り付ける。両国はさらに、排出量上限に関する国際的オークションから得られた収入の大部分が、割り当て量に比例して各国が受け取れる事を確約させる。その背景では、参加国はこのような同意が究極的には、中国とインドが国際市場や投資に関連してよりオープンになっていく事を通じて、全参加国にとって利益になると予想している。

このような開発により、米国、中国、インド、日本、欧州の間でCO2管理は連携が取れたものとなる。2012年より、意味を成すには十分な数の国が排出量取引の枠組みへ参加するようになり、新たなエネルギー技術へのイノベーションおよび投資が刺激され、2020年以降におけるCO2捕獲、地下への貯蔵技術への道のりが開かれる。

3.3 Developments benefit the energy poor (開発はエネルギー欠乏国にも利益)
ブループリントシナリオでは、乱立しつつも初期の開発イノベーション及び、草の根活動により証明された実践方法の適用は、低所得国にも利益となる。最初、この動きは石油市場のダイナミクスにより支えられる。OPECは石油価格を抑える為に生産を増やし、よりコストのかかる代替物の開発を遅らせる。風力、太陽発電からの送電に関する成長が加速した事による利益も生まれるようになる。新しい風力発電用タービンや、より低価格のソーラーパネルは簡単に地方に輸出されるようになり、比較的短い間に多くのアフリカ諸国における地方では、より深く、清潔な地下水を汲み上げる為のエネルギーや今後の開発に必要なエネルギーが風力、太陽エネルギーにて賄われるようになる。インドは風力発電に重視して投資を行う一方、中国では新しいソーラー発電に関するパイオニアとなる。そしてこれらの風力および、特に太陽発電に関するテクノロジーは、西側諸国に再輸出される。

各国政府はゼロエミッションカーを重要視するようになり、大量生産の為の財政的支援を行い、今までにない風力、太陽エネルギーの拡大がバッテリー、燃料電池、ハイブリッド技術等を用いた電気自動車市場を活性化させる。電気自動車市場の拡大は、これがなければ衝撃的であったであろう、石油生産の伸びの低下を衝撃無しに各国が受け止められる事を可能にした。ブループリントシナリオでは、エンドユーザが用いるよりエネルギー効率的な電気機器や、その結果による主エネルギー需要の緩やかな伸びがエネルギーの低価格化へと結びつき、これにより以前はエネルギー不足に悩んでいた国が、生活水準の上昇を加速させる事を可能とする。

3.4 Both disaggregation and integration (分解と統合)
2050年において、ブループリントシナリオにおける一つの目に付く革命的な変化は、経済成長はもはや化石燃料の使用量増加に依存しなくなるという事である。これは、世界は分子ではなく電子の世界へ移行する事を意味する。政府によるインセンティブ付けにより大量生産された事によってコストが下がった事と、消費者に対する魅力から、電気自動車は輸送セクターにおける標準へとなる。再生可能エネルギーによる発電は急速に成長し、一方で石炭、ガスによる発電は厳しい炭酸ガス排除テクノロジーを用いる事を求められる。先進国では、OECD諸国のにおける石炭、ガス発電所の90%が、非OECD諸国では50%がCCS(Carbon Capture and Storage:炭酸ガスの確保および保存)テクノロジーの備え付けるようになる。これによりCCS設備がない事と比べて、CO2排出量は全体的に15-20%削減されるようになる。新しい、ファイナンス、保険、トレード市場が生まれ、それらは新しいインフラ設備を建設する為の財務手段の助けとなる。これらの再生可能エネルギーの出現により、ヨーロッパにおける化石燃料の欠乏はもはや不利な事ではなくなる。人口縮小にもかかわらず、また厳しい効率基準を満たす為に早い時期に資本ストックが置き換えられた事により、再生可能エネルギーは経済的となる。

ブループリントシナリオでは、次なるより意味深い変化が政治レベルで起こる。すなわち、国家政策レベル、その実施を引き受けるその下位のレベル、そして国際レベルにおける相乗効果が生まれる。詳細については国々、国際的組織によって異なるものの、環境、世界経済の状態、およびエネルギー保障に関した懸念については、何が上手くいき、何が上手くいかなかったという点についての同意が形成される。これにより、全体像に基づいた行動を取る事が今までに無く可能となる。政治的分断を乗り越えて、起こりそうのないパートナーシップが生まれるようになる。世界の色々な都市が経験を共有し、より広いパートナーシップを形成する。先進都市のグループであるC-40は、その年の数を増やしつつ、都市開発における最も良い方法論を確かめ、さらには農村部においても古いテクノロジーの廃棄場になる事を恐れる事もあり、その連合に参加するようになる。

国境を越えた協力体制はイノベーションのスピードを加速させる。地方、国、国際レベルにおける規制がより統合された事により、新しいテクノロジーはより早く競争力を持つようになり、より簡単にグローバルに展開されるようになる。

ロシアや中東諸国は戦略的利益を考え、自らが使用する為および、化石燃料をより利益の出る輸出に振り向け自国内での使用を減らす為に代替エネルギーを開発する。そしてこれらの事が重要な役割を果たす。他の国々では石炭の開発が続くが、よりクリーンな石炭技術やCCSへの対応を行う。特にOECD諸国における石炭輸出国は、輸出に関連するCO2排出枠が必要となり、このことが炭酸ガス排出を管理する枠組みについての研究を促進させる。このことは、継続可能な大気濃度になるようにCO2排出量を減らす事に役立つ。

新たな企業-政府間における協力体制により促進される多国籍企業によるR&D費、より透明性が高く信頼性が置けるエネルギー統計、効率的な炭酸ガス価格決定、予測可能な規制、これらにより投資における不確実性は取り除かれる。これにより、起業家、投資家によるR&Dへの投資を活気づけ、イノベーションがさらに早くマーケットに届くようになる。

これにより経済発展は安定し、グローバル経済はより統合された世界になる。草の根からの圧力と、ブループリントシナリオを形作るより大きな透明性が、民主政府、独裁政府の両方にとってより説明責任を果たすような圧力となる役割をはたす。幾つかのケースでは、このことが秩序立った変化を促進する。しかしながら、このシナリオにおける加速したテクノロジーおよび規制の変化は追加的なストレスとなり、より硬直した社会や政府にとって変化への対応を難しくする。都市と農村部間における緊張は増し、幾つかの国、特に貧しい国では、劇的な政権交代が起きる。賢く行動をまたは投資を行わない限り、 輸出と売上が減少する事でこのような事は豊かなエネルギー輸出国においても起こりえる。これは、起きつつあるより広い分散された、政治的な混乱と相まって、グローバルに連携をとるような世界である。しかしこの混乱は、徐々にグローバルエネルギーシステムに対してのインパクは減少していく。

3.5 Blueprints for climate change response (ブループリントシナリオにおける気候変化への対応)
気候変化に関する懸念について如何に対応するかという点についての合意は、政治的リーダーが奇跡的いその行動を変えた事によって起こるのではない。これは、草の根からの価値観が、メディアや国際的な圧力団体を通して政治的な検討課題にまで達した事を反映している。またこれは、規制の明確化と一貫性を求める産業からの圧力にも支えられている。このような圧力は、国際的な枠組みによるエネルギー安全保障のマネジメントに関する懸念についての打開策を、気候変動の緩和、対応策と同時に見いだす結果となる。2012年の京都議定書の失効後、地方および都市間の枠組みから、意味のある国際的な炭酸ガス取引の仕組みが、強力な検証および認証の仕組みを持って生まれる。一貫した米国の政策は、テクノロジーへの投資をサポートし、その開発は効果的な変化に対する突破口という目に見える形で報われる。より信頼のおけるエネルギー統計と、より確かな情報に基づく市場分析は炭酸ガス取引の先物市場においてより明確かつ長期的な価格シグナルとなる。これらの枠組みにより、市場はCO2排出の割り当てが厳しくなると予想し、そしてその対策案を練る。

2055年には、米国と欧州は今日に比べて一人当たりのエネルギー使用量が33%ほど少なくなる。中国におけるエネルギー使用量もピークを越える。インドでは未だにエネルギー使用量が増えているものの、比較的発展が遅れていた事から、インドはよりエネルギー消費が少ないまま国として発展していく為の手法等を多く持つ事となる。政治的、官僚的に、エネルギー政策を調和がとれたものにする為の努力は難しいながら行われ、また大きな先行投資が必要となる。しかし、ブループリントシナリオでは、変化に必要な数の国、人々がエネルギー安全保障だけではなくて、継続可能な未来について約束するリーダーをサポートする。初期のプランが、不確実性を取り除き、そして長期的な前進への準備となった。

Concluding remarks
スクランブル、ブループリントシナリオ共に、エネルギー供給、需要、テクノロジーに関する詳細分析に基づいている。もちろん、シナリオにおけるすべてを短い概略に治める事は出来ないが、私たちはこの資料によりシェルにおける最新のエネルギーシナリオと、これから直面する選択肢とその意味合いを伝える事が出来ると信じている。

両方のシナリオともに喜ばしいものではないが、これらは我々が直面している厳しい真実から予想されたものである。両方共に、経済成長の成功とそれに伴うグローバリゼーションについて描いているが、同時に地政学的な混乱を導きかねない分岐点についても描いている。これらのシナリオでは、将来の世代に対して、良いものと混乱するもの、異なる遺産を共に作り出している。しかしながら、これらは合わせて、グローバルエネルギーシステムにおいて革命的な変化を迎える現在の可能性、限界、チャンス、混乱をも描いている。

幾人かの読者は、片方のシナリオが他方よりも好ましいと思ったり、またはもっともらしいと感じるかもしれない。これは、読者がそれぞれの持つ経験や興味からシナリオを判断する為であり驚く事ではない。実際、我々はこれらのシナリオを地球上の異なるバックグラウンドを持つ人々や専門家と共に議論し、作り上げてきた事もあり、この二つのストーリについて殆ど全ての反応の組み合わせを得ている。これにより我々は両方ともに現実的であり、かつチャレンジングであると確信している。

これらのストーリをより深く知る為に、我々は幾つかの質問事項を頭に抱きつつレビューする事を勧める。質問事項としては、「どのような節目、イベントが特に我々に影響を及ぼすのか?」「私たちの環境に影響を及ぼすにはどの要素が最も意味があるか?また、それにどう対応するか?」「次の5年、迎えつつある混乱に対応する為に私たちがするべき事は何か?」といったものである。

我々は読者と我々の考えを共有できて喜ばしい。我々は共に次の50年、TANIAを迎えるようになる。迎えつつあるチャレンジに対して理想的な解決策が無いが、我々は多くの難しい問いに対して答えを出さなければならない。明日の世界の複雑なダイナミクスをより明確に理解する事で、我々は避ける事の出来ない混乱をより明確に進む事が出来るであろう。我々はこのシナリオが読者に対して何らかの役に立つ事を望む。

Jeremy B. Bentham
Shell International B.V.

2010/04/04

シェル エネルギーシナリオ 2050 (その1)

石油会社のシェルはLooking aheadという形で数年ごとにエネルギーという視点からシナリオプランニングを行っており、最新のシナリオでは2050年までのエネルギー環境を描いている。

このシナリオを知る事が、企業価値評価において直接役に立つかどうかは分からないけれども、シェルというエネルギーメジャーがこうしたシナリオを描いている事と、シナリオプランニングの技法に触れる事は、この先の将来業績予測における一つの補助線的な役割になると考え、このシナリオの主要部分について翻訳を行ってみた。

尚、訳については十分な注意を払っているものの、誤訳が含まれている可能性については否定出来ないので、この翻訳の利用については各自のOwn Riskにてお願いします。
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Introduction

如何にして我々はこれから迎える、より先鋭で、ダイナミックに変化するグローバルエネルギーシステムに対して準備をすれば良いのか?

この質問は政府、ビジネス、市民活動における責任あるリーダーは記憶にとどめておくべきものである。これはすべての市民に関わる問題だからである。

グローバルエネルギーシステムは、我々の時代における幾つかの深いジレンマと結びついている。それはすなわち、開発に関するジレンマ:繁栄対貧困、信頼に関するジレンマ:グローバリゼーション対安全保障、産業化に関するジレンマ:成長対環境、といったものである。グローバルエネルギーシステムにおいては常に緊張関係が存在するが、今日、その緊張はますます強まっている。

1990年代、シェルにおけるシナリオプランニングにてTINA(There Is No Alternative:代替案は存在しない)という言葉を持ち出した。市場の自由化、グローバリゼーション、テクノロジーの進化という揺るぎない圧力は世界経済におけるエンジンとなり、これはすでにアジアの多くの人々を巻き込んでいる。1990年代におけるシェルのシナリオは、TINAの異なる側面について調査する為に役に立った。2005年、シェルではTINAに関連して地政学的な危機、信頼に関するシナリオを発表した。これらは9/11やエンロン事件の前兆となったものである。現在、シェルのSignpostにおいて述べられている通り、有力なエネルギー産出国と消費国の間におけるマインドセットと行動について重大な断層が生まれつつある。人口増加、経済成長はエネルギー供給、需要、及び環境に対するストレスを増大させる。全体から見て、我々はエネルギーシステムに関して非常に大きな混乱の時代に突入している。

それでは、その緊張関係や矛盾はシステムの中でどのような働きをしているのか?ここではTINAの次なる言葉を用いたい。TANIA(There Are No Ideal Answers:理想的な解決策は存在しない)である。

近代エネルギーシステムにおいては、その非常に大きな規模、複雑性を考えると、大きな慣性が働いている。新しいエネルギーインフラに対する設計、建設に要する非常に長い時間は、エネルギーシステムが内包する緊張関係は仮に解決できたとしても、簡単、もしくはすぐに解決できるものではない事を意味する。大きな変化が明らかになるには数年という時間が必要だろう。しかし表面下では、各要素がすでに動き出している。そこで、如何にしてその変化を認識し、組み合うかという事が問題となる。

シナリオは、このような変化をとらえ、異なる展望と可能性についての相互作用を考慮する上で役立つものである。またシナリオは、これらの可能性が姿を現した際、人々が備え、社会を形作り、そして繁栄する為にも役立つ。本シナリオではスクランブルとブループリントという、今後50年におけるエネルギーシステムについて二つのシナリオを作成した。

両シナリオともにチャレンジングな見方である。両方とも理想的な世界ではないが、現実可能なものである。これらのシナリオでは、変化の時代について述べている。誰もが、100年後のエネルギーシステムは今日のものとは異なるだろうという事を知っている。しかし、次の数十年においてこの変化はどのように生まれるのであろうか?これらのシナリオでは、政治、規制、テクノロジーの変化の速度、形態に関する重大な差異についてのインパクトを浮き彫りにさせている。

私はこれらが、読者にとって刺激を与え有益であると信じる。しかし、それ以上にこれらのシナリオにより、読者が持続可能なエネルギーの将来について準備をし、社会を形作る事に対して責任をもって参加する事を期待したい。
Jeremy B. Bentham
Global Business Environment Shell International B.V.

1 An era of revolutionary transition (革命的な変化の時代)
1:Step-change in energy use (エネルギー使用方法の段階的変化)
膨大な人口を持つ中国・インドを含め発展途上国は、産業化が進み、インフラが整備され、人・物の移動が増えている事もあり、経済発展の段階において最もエネルギー消費が激しい所に来ている。需要サイドの圧力は、代替エネルギーや、より効率的な消費を促す。しかしながら、これら一つだけではそのエネルギー需要の成長を完全に相殺するには不十分である。多くの人々の希望を失望させるような政策を取り入れる事で経済成長を抑制する事は回答にはならず、また政治的にも現実的ではない。

2:Supply will struggle to keep pace (供給ペースを保つ事は難しい)
2015年において、アクセス容易な石油、ガスの産出の成長率は、予測される需要の伸び率に対応できないであろう。一方、石炭は世界中に豊富に存在しているが、輸送の困難や環境破壊の点から、石炭の産出についても成長には制限がある。一方で、代替エネルギーとなるバイオ燃料等はエネルギー全体からみてより重要なポジションになるであろうが、エネルギー問題を完全に解決するであろう”特効薬”は存在しない。

3:Environmental stresses are increasing (環境からの圧力も高まっている)
もし、化石燃料が今後もエネルギー供給における今と同じ割合を保つ事が出来てかつ、需要の伸びにも対応できたとしても、CO2排出が人々の生活を大きく脅すであろう。化石燃料が適度に抑えられ、CO2排出の管理が効果的に出来たとしても、その先の道は非常にチャレンジングである。大気中のCO2レベルと望ましいレベルにとどめておく事も、ますます難しくなるであろう。

Preparing for the future (将来に向けての準備)
需要、供給、環境への影響という現在のエネルギー環境において最も重要な要因が大きな変化を迎えている事もあり、我々は革命的な変化と大きな混乱の時代に直面している。エネルギー価格とテクノロジーがこの変化を駆り立てるが、政治、社会的な選択も重要な要素である。この選択は、我々がこの起きつつある変化に対して如何に敏感であるかに依存する。特に、この先10年程は健全な発展と思われているものに我々は混乱させられるであると思われるからである。しかし、この平常通りと思われている事の水面下では、変化はすでに起き始めている。政府・企業はより長期的な代替ポジションを取り始めており、規制の枠組みが議論され始め、特効薬は存在しないものの、再生可能エネルギーといった新しいテクノロジーを組み合わせた開発が進み、既存のエネルギー供給システムとの統合が始まっている。また、二酸化炭素を捕らえ保存するといった新しいインフラが求められており、古い非効率なインフラは退役させる必要がある。

人々は、エネルギーの使用方法が、我々の最も大きな価値である、健康、コミュニティとその環境、子供の将来そして地球そのものを養うと同時に脅威にもなる事を理解し始めている。これらの深い個人的な希望と恐怖は、異なる集合的な結果に対してある意味では激しく相互作用する事もあり、また、新しいエネルギー時代を様々な道から導くものとなりえる。

Two possible worlds (二つの異なる世界)
この意味深い変化は不可避である事を踏まえて、如何に変化がおきるのであろうか?国家は単純に自らのエネルギー確保の為に奪い合い(Scramble)をするのであろうか?それとも、地域から国際間といった社会の様々なレベルにおける連合により新たな青写真(Blueprint)がうまれ、新しいエネルギーの枠組みが生まれるのであろうか?

2 Scramble (スクランブル)
Scramble - overview at glance (スクランブルにおける概要)
スクランブルシナリオは、国家のエネルギーに関する安全保障に焦点をおいている。とりわけ、自国及び同盟国における近未来のエネルギー保証の必要性といった目の前にある圧力が意思決定者を動かしている。国家の注意は、二国間協議や地元の資源開発にむけたインセンティブといった供給サイドから見てすぐに手に入る物に自然と向けられる。石炭やバイオ燃料の成長も特に重要である。

レトリックは増えるものの、気候変化やエネルギーの効率性向上に向けた実際の行動は未来に追いやられ、注目の順序は供給、需要、気候変動となる。需要サイドの政策は、供給の限界が明らかになるまで特に先には進まない。同様に、環境に関する政策も、大きな気候変化に関する何かが政治的な反応を起こさない限りは真剣には取り組まれない。気候変化に関する何かが起きると、それは生まれつつ圧力にたいして手遅れになりがちでかつ激しい反応を呼び、それはエネルギー価格の高騰や激しい変動という結果になる。これは、力強い経済成長全体に対して一時的な減速に繋がるであろう。

大気中のCO2濃度の成長は、この期間の終わりには適度な所になるであろうが、長期的には550ppmを大きく超えるものになる。経済活動とイノベーションの一部は徐々にかつ究極的には気候変化のインパクトの対応準備に向けられるであろう。

2.1 Fear and security (恐怖と保証)
スクランブルシナリオにおける主な登場人物である国家は、エネルギー政策を供給面から注目する。なぜならばエネルギー需要を抑える事は、つまり経済成長を抑える事は、あまりにも政治的に不人気な手段であり実行する事は出来ないからである。国際的な協力体制が不在である事は、個々の国々が不本意ながらも、結果的に各々の経済成長にダメージを与える一方的な活動をする事を意味する。結果としてこの事は、石炭、重油、様々な地域による基準や技術の集まりとなるバイオ燃料や他の再生可能エネルギー等を含む国家独自にて入手可能なエネルギー確保に関する開発に向けた、比較的まとまりのない範囲での国家による開発指令や開発の為のインセンティブとなる。

国際間において、スクランブルシナリオはエネルギー産出国と消費国の間における二国間取引の世界となる。国家は国内のエネルギー会社を通じて、エネルギー供給に関して如何によい条件を引き出すか競争を行う。エネルギー消費国間においては強力な競争要素があるが、利害が一致した場合は協力関係となる。このような世界において、エネルギー会社は仲介人としての役割を果たすが、その役割は政治的なメカニズムの中に埋没していく。グローバリゼーションはこの国家間の緊張を深刻化させ、政策立案者をエネルギーや気候変動に関する国際的な協力関係を築く為の行動を行う必要性から背ける事になる。

ビジネスサイクルの変動は継続するが、エネルギー価格は一般的に強気となる。これは供給サイドにおける本質的な圧力だけではなく、2004年のエネルギー価格高騰から、世界経済はエネルギー価格の上昇を比較的容易に吸収できるとOPECが学んだ事にもよる。OPEC加盟国の経済的利益の観点から、OPECは石油価格下落の初期段階から供給を絞るようになる。価格が高止まりする事と供給が増えない事から、エネルギー輸入国にとって”有利な条件”とは供給が中断しないと保証する事を意味するようになる。

スクランブルシナリオでは、主な資源保有国がルールを受け入れるのではなく、ルールを作る側になる。彼らはその拡大する力を国際政策に、 特に彼らが内政問題と主張する人権や民主主義といった事柄において、 影響を与えるような形で行使する。石油産出国との間に”有利な条件”を作り出した国家は、ようやく作り出した条件を駄目にするような事は望まず、その結果国際関係は継続的な繁栄を望む為の競争となり、継続可能な国際間コミュニティーをつくり出すような動きとはならない。

異なる国々の間では、経済、エネルギーに関するパフォーマンスに非常に大きな差が存在する。発展途上国においては経済的発展を遂げる為に必要なエネルギー調達に邁進する一方、先進国においては既存のライフスタイルを維持する為に、エネルギー消費形態を如何に対応させていくか問題を抱える。国家レベルにおいてエネルギー確保に邁進する行為は、国家は相互依存であるという不可避な現実が障害となる。共有されたエネルギー伝送構造と同様に、経済的・政治的に複雑な繋がりは、ある国のエネルギー安全保障は他国の協力を必要とする。不可避として存在する問題は、 国際間における枠組みの欠如と多国間制度が弱い事から、徐々にまた非効率に扱われる

エネルギーシステムにおける圧力の増加から、ニュースメディアは定常的に世界のある部分で起きているエネルギー危機に関する報道を行う。変化の早い社会的ストレスを抱えている政権は、国民からの正当性を簡単に失うようになり、幾つかの国では劇的な政権変化も起きるであろう。幾つかのケースにおいては、エネルギー需要を抑える為の誤った判断から条件反射的に補助金等を削除した事が、上記のような大きな変化を起こす要因となろう。そのような大きな混乱にも関わらず、この初期の期間においては大部分の人々は物質的には発展を経験するであろう。全体として、2025年までの世界経済は継続的な発展を遂げるであろう---主に石炭に由来して。

2.2 Flight into coal (石炭への逃避)
エネルギーに関する懸念事項が増す中、低コストのオプションとして石炭をできる限り活用する事が政治的、市場的にも好まれるようになる。エネルギーに関する自立という一般からの圧力に対する反応や、石炭の活用は自国内に雇用を創出する事等から、大きな経済圏を持つ国々の政府はこの自国内で得られる資源を活用するようになる。2000-2025年にかけて、世界の石炭市場は倍増し、2050年にはおよそ2.5倍になるであろう。

しかしながら、環境保護団体が忌憚なく指摘するように石炭の活用は問題がある。米国やその他の豊かな国々では、新たらしい石炭工場の建設を行うたびに抗議と抵抗運動が発生する。中国では、地方の環境悪化問題が社会不安を引き起こす。また、中国の鉄道インフラは大量の石炭を国内に輸送する、もしくは石炭をオーストラリア、インドネシ等から輸入するには問題を抱えており、その為、鉄道インフラを大規模かつコストをかけて改善する必要がある。気候変化についての問題は、中国とアメリカにおける石炭産業の拡大と紐ずけられる。石炭に対する抗議が広がるものの、政府は経済成長にダメージを受ける事を恐れて、二酸化炭素税、二酸化炭素トレード、効率的な委託機構といった温室効果ガスを管理する為の仕組み作りにはなかなか取り組まない。

石炭発電による需要を抑える事を目的として、幾つかの国では原子力発電の増加が重要であると結論づけるようになる。石炭とは反対に、原子力発電は世界規模で素早く展開をするには最も難しいエネルギー源の一つである。ウラン鉱山および原子力発電所の開発には時間を要する。核廃棄物の廃棄問題がさらに問題に難しさを加えている。自国にて核施設を持ち運営している幾つかの国においても、非常に大きく、かつ長期的な財務的リスクを有する原子力発電所の建設を企業が行うには、政府の重要なサポートが必要となる。加えて、核兵器拡散への懸念による核技術を友好国以外に提供する事への躊躇いから、スクランブルシナリオにおいて核エネルギーがエネルギー構成に占める割合は本来のポテンシャルに比べて小さいものになるであろう。

2.3 The next green revolution (次世代の緑の革命)
農業に関する大規模なロビー団体は先進国においてすでに強力であり、本シナリオの初期においてはバイオ燃料に対する大きな期待が存在する。これは液体輸送燃料の急速な成長に結びつくものの、同時に予期しない結果にも結びつく。第一世代のバイオ燃料は食料生産と競合し、世界的に、特にトウモロコシを食料使っている地域にて、食料市場の値上がりに繋がる。また、EUのように食料生産のポテンシャルが不十分な地域では食料不足を輸入で補い、それが間接的に貧しい国々が、ヤシ油、トウモロコシ生産の為に熱帯雨林や現地の生息環境の大部分を破壊する事に繋がる。土地の使用方法の変化は、地中に保存されていた大量のCO2が大気中に開放される事も同時に意味する。

これらの予期しない結果は、次世代のバイオ燃料が2020年までに確立される事の一因となる。次世代バイオ燃料は、食料生産の際に発生する茎や葉等の木製の廃棄燃料を用いている。継続性を推進する為に、第一世代、第二世代のバイオ燃料に対して認定システムが作られる。第二世代のバイオ燃料の主な利点は、特に熱帯地域以外においてエネルギー生産が高い事にある。主なOECD国は温暖地域にある事から、これらの国々では第二世代のバイオ燃料に合わせて経済活動を結びつける事に熱心になるであろう。

2.4 Solutions are rarely without drawbacks (難点がない解決策はなし)
オイルサンド、シェイル、石炭といった毛色の変わった石油がスクランブルシナリオにおけるエネルギー安全保障の手短な解決策として挙げられたとしても、それらにもネガティブな結果が存在する。2010年代を通して、投資家はますます多くの資金を新たな形の石油開発プロジェクトに投入し、それが供給圧力に対する重要な役割を果たすであろう。それにもかかわらず、これらの開発は水資源、環境保護ロビー団体が、開発に対する環境への影響を懸念して反対するようになる。これらの反対運動は、究極的には最もよくマネージメントされたプロジェクトに対しても政治的な反動を呼び起こすであろう。

供給サイドによるアクションは、需要増に対しては不十分もしくは不人気である事が証明された事により、政府は最終的にエネルギー需要を和らげる方法に踏み出す。しかしながらすでに需要圧力は予期せぬ結果と共に臨海値に達している。例えば、新たな建設に関する厳しいエネルギー効率基準の突然の導入は、業者や官僚が新しい規制に対応できるまで新たな開発を遅らせる事となる。幾つかの例では、この事が全体のエネルギー効率向上のトレンドを遅らせる。

スクランブルシナリオにおいては、典型的な3つのパターンが生まれている。最初は、エネルギー供給がタイトになった事に対応する為に国家は、石炭や炭化水素、バイオ燃料に逃避する。次に、石炭産出が成長する事で、石油やガスはメインテナンスされなくなり、全体における供給危機が起こる。最後に、政府はこの事に対応する為に、急激かつ突然の国内におけるエネルギー価格上昇、もしくはバリューチェーンの混乱、経済活動に対する重大な転位を伴う個人移動に対する厳しい規制を課す。2020年までに、エネルギー経済における様々なエリアで繰り返し起こるこの非常に厳しい3つのステップは、一時的な世界経済の減速という結果に繋がるであろう。

2.5 The bumpy road to climate change (気候変動への浮き沈みの激しい道)
主に新興国において経済成長に焦点を当てたままにしておく事は、気候変動に関する議論を置き去りのままにする事となる。活動家による抗議が増えつつあるも、警告が多すぎる事により一般の人々は警戒慣れしてしまう。気候変動に関する国際的な議論は、豊かな先進国と、貧しい発展途上国との間における対立する立場同士の耳を貸さないイデオロギー的な対話により身動きが取れなくなる。これにより大気中のCO2濃度はますます高まっていく。

生まれつつあるエネルギー供給、需要間の緊張は、レトリック的に述べている懸念に対して真に対応せざるを得なくなるまで、政治家が対応を行うのが難しいであろう。気候変動に対して対応を行う事は、経済に対する更なる圧力と受け止められ、対応に要する事柄の質から、誰もが最初に対応を行うというリスクに対して準備が出来ていない。

一方で、起きつつあった経済成長に対する憧れが突然失望に変わった途上国においては、政治的な圧力が強まる。国際的な協力関係についても同様に緊張状態に置かれる。ロシア国内における石油の使用は、東ヨーロッパの成長を抑え、低所得のアフリカ諸国では石油に対するアクセスに苦労するようになるであろう。

最終的にこの行動の欠如が、極端な天候や供給縮減に対する政治的に日和見主義な非難、もしくは政治的目的を持った反射的な反応を起こしやすい状態を作り出す。これらの反応は手遅れという事だけではなく、需要側に対して違いを起こすには小さ過ぎるものである。幾つかの国々が高炭素エネルギー資源の開発に対して一時的なモラトリアムを設定するなど、混乱を起こすほど過剰反応を呼び起こすケースもある。

2.6 Necessity - the mother of invention (必要性 - 発明の母)
変化は必要に迫られ起こるのだが、エネルギーシステムにおける大規模な変化が必要な事から、方向転換には10年を要する。国内におけるエネルギー価格高騰と、政府によって課された要求水準の非常に高い基準は、エネルギー効率における重要な進歩を引き起こす。最終的に、バイオ燃料、風力、地熱ソーラーといった国内で開発された代替エネルギー供給は、以前に比べて大きな役割を果たすようになる。イノベーションを起こす為に、非常に大きな刺激策を行う事で厳しい時期を乗り越えた新しいエネルギーセクター等、2030年には健全な経済発展を取り戻す。

エネルギー構成全体における炭化水素燃料の割合が減少していく事、代替エネルギーの割合が増えていく事、エネルギー効率が改善される事すべてが、大気中のCO2濃度を適度なレベルにしていく事に貢献する。しかし、結果として起こる経済発展が再び始まる事は、CO2排出を引き起こす力強いエネルギー消費が再び始まる。また、CO2濃度はすでに高い状態にある。エネルギー安全保障と気候変動の緩和の為に新たな国際的なアプローチの必要性について世論の一致を見るようになるが、2015年までにそのような仕組みがもし出来ていたとすると、世界は20年以上遅れている事になる。経済発展は多くの人々に富を運ぶようになるが、規制がはっきりしない事もしくは、国際的な合意がない事から、温暖化ガスに対する対応についての市場からの反応は鈍い。経済活動において、増えつつある一部とイノベーションは究極的に、気候変動のインパクトに対応する為の準備に向けられるようになる。初期の段階において厳しい判断を避けた事により、国家は2050年を超えても厳しい現実に向かい合わなければならなくなったという事を認識するようになる。





シェルエネルギーシナリ2050(その2) へ続く