2009/11/19

High Speed Slide

High-Speed slide November 14th 2009
優秀なトレーダーにとって良い事は、マーケット全体から見たら悪影響?

Finance and Economicsセクションのこの記事は、アメリカの証券市場が自らの競争力を高める為に行った施策が、結果的に証券市場を細らせている可能性があるとの指摘である。

主なポイントをまとめると以下の通り。

・今年アメリカにてIPOした会社は50社あるが、これは上場企業の数を維持する為に必要な数の1/7でしかない。図を見る限り、アメリカにおける上場企業数の減少は、多の地域と比べて明か。

・上場企業数の減少は1990年代中頃から行われ、これは規制緩和による証券市場の低コスト化、効率化と一致していが、証券市場全体のEcosystem(小さな企業を上場させ、大きな会社に育てて行く過程)に予想もしなかった副作用が起きた。

・コンピュータを駆使した”high-frequency(売買を頻繁に繰り返す)”トレーダーは、株式の流動性を重視するため、小型株に興味を示さない。同様に流動性に対して意識が高い機関投資家も同様の傾向を示しつつある。

・一方、Index投資がはやっている事と、投資銀行業務からの利益をアナリストに援助する事が禁止されている事もあり、多くのアナリストの分析が大型株もしくは取引が頻繁に行われている株に偏っている。→小型株の分析は殆ど"蒸発寸前"である。

・魅力ある証券市場でありつつける為の解決策としては、手数料固定である程度の取引制限を設けかつつ、企業リサーチに補助金を出す市場の創設もしくは、IPO以前の会社に対してより規制を緩和した市場の創設といった大きな変革が必要であろう。

以上。

アメリカにおいて上場企業の数が減っているという減少は知らなかった。証券市場を強化するための手段として行った事が、結果的に証券市場に対してダメージを与えているという結果はとても皮肉に思える。この話を読んだとき、システム開発に携わっている人が「常にユーザーは開発者の思惑を超えたシステムの利用方法を思いつく」という発言をした事を思い出した。上に書いてあるような事態は開発者(立法者)が開発当時(規制緩和当時)は思いつかなかった事象だろう。もちろん90年代後半からのIT革命も大きな役割を果たしているので、規制緩和時点で全ての要素を考慮するのは難しいと思うのだが。なおHigh Frequency Tradingについてはぐっちーさんの解説が参考になる。

一方で、システムトレードが発達した結果、大型株に多くの注目が集まり小型株に目をかける人がいなくなるという状況は、見方を変えると小型株の企業価値を測る事が出来る投資家にとっては非常に大きなチャンスという事になろう。

「市場を味方に付ける」とはバフェットの言葉だと思ったが、まさに如何にして市場を自分の味方にするか?という事を考えるきっかけとなる記事である。

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