クラウドコンピューティングについて調べようとしていた所、The Economistにクラウドコンピューティングについての記事があった。企業価値評価とは直接関係のないエントリではあるものの、クラウドコンピューティングは今後のITにおける大きなトレンドであるとの考えから、備忘録代わりにここにメモとする。
----------
Battle of the clouds
クラウドにおける3つの注意点
・テクニカルロックイン
クラウドサービス間においては、サービスの互換性がない。
・個人情報
大抵のサービスは無料で提供される。ユーザは一定程度の個人情報と引き替えに、
サービスを無料で使用できる。しかしながら、個人情報の管理(サービス提供会社が
どの情報を広告に利用できるか?)については、ユーザがコントロール出来るべきである。
・データのロスト
クラウド側にすべてのデータがあるため、サービス提供会社のサーバがクラッシュすると、今までにない規模の大量の顧客のデータが一瞬にして失われる。
透明性、信頼性についてサービス提供会社側が注意しないと、何らかの規制が入る可能性があろう。すでに、AppleとGoogle間において取締役が重複している事に関して、独占禁止委員会が警告を発している。
電力については、自社設備で発電して給電するという事はすでに行われずに、発電所からの電気を買っている。クラウドコンピューティングについても、自前でコンピュータを保持せずに、サービス提供会社からコンピューティングパワーを買うという方向になるだろう。
----------
Clash of the clouds
クラウドにおけるMS,Google,Appleの分類
Google
1998年に誕生したときから、クラウドをベースにした会社である。
米国におけるサーチベースの広告では75%のシェアを持つ。
収入構造:広告収入が大部分であるが、法人に対する有償サービス提供も始めた。
知的財産:広告に依存している事から、知的財産に対してはオープンな政策。Chrome OSをオープンソースにする事で、MS等に対する牽制を行いつつ、Googleの サービスに対する需要を増やす→広告収入増を見込む。但し、内部データ構造、サーチエンジンのアルゴリズム等の基幹となる技術については公開せず。開発体制は分権化が進んでいる。
MS
クラウドに関しても結構投資している。
オンラインサービスで数十億ドル規模の損失を出した一方、独自のネットワーク、データセンタを持っている。XBoxはオンライン機能が豊富にあり、Bingもシェアを増やしつつあり、MS-Officeについても、オンラインサービス化を準備している。
収入構造:パッケージソフト販売がメインであるが、広告収入も増やしつつある。
知的財産:他ソフトウエア企業が、Windows上でソフトを走らせるために必要な情報は公開。しかし、Windowsの基本的な情報は公開せず。開発体制は中央集権化。
Apple
値段が高いが、革新的なソフトとハードの組み合わせを販売する。アップルのサービス(iTune, Apple Store, MobileMe)は、あくまでもハードを売るための手段の一つ。最近は、クラウドにも興味を持ち、10億ドルを拠出してデータセンタを買った。
収入構造:ハードウエア販売がメイン。サービスにおける収入についての内訳は公開していないものの、online music等のセールも過小評価出来ず。アップルのサービスには広告がない一方、消費者がコストを払う形式となる。また、法人はサービスの対象となっていない。
知的財産:OSの情報は他社には一切公開しない。Appleに認証されていないiPhoneアプリはApple Storeに公開されない。オープンという言葉はアップルの辞書にない。
・ソフトウエアに対してオープンでいる事が、勝負を決めるわけではない。多くのGoogleのサービスは失敗に終わっている。MSは、ソフトウエアを等してPCをコントロール出来るので、PCとクラウドに関してシームレスなサービスを提供可能である。また、多くの顧客は、不便がある事を理解した上で、ソフトとハードが非常に高レベルで統合されたアップルの製品にお金を払っている。
・3社ともに多くのリソース(資金、シェア、過去のソフトウエア資産)がある。
・データセンタ、サービス提供に関しては、Googleが一歩抜きんでて、MSが追うという展開だが、周辺機器関連ではAppleに大きな強みがある。ただ、周辺機器関連では、Google Andoroidが大きな可能性を秘めている。
・米国等におけるblog界隈では、Appleが出版業界等に向けて、何か"めちゃくちゃすごい(insanely great)"新規デバイスについて話を始めたという噂がある。
・その他の対抗馬としてはAmazon, Facebookがある。Amazonはすでにクラウドサービスをその他のオンラインサービス会社に提供している。Facebookは1億人以上のユーザがおり、間違いなくもっとも成功したクラウドサービスである。
・アメリカ以外の国も、政府主体のクラウドを構築する計画などもあるが、今後のクラウドサービスを優勢に進めるのはやっぱり米国の企業であろう。
2009/10/17
登録:
コメントの投稿 (Atom)
どーも、ひさびさです。
返信削除ちょっと仕事中ですが、思い出したので書き込んでみました。
クラウド気になっていたので、この記事も面白かったです。
さて、ちょっと興味があるので書き込んだのでうが、今東京メトロと都営地下鉄が経営統合に向けてという話が出てますよね。
やっぱりM&Aと提携にかかわるデューデリが一番面白いなと最近感じてる次第です。
キリンとサッポロの記事とかかなりがっつきました(笑)
特にこのご時勢、生き残りをかけたM&Aとか提携とかが多いので、統合によるシナジーとかってどう評価するんですかね?
マーケット全体の中でも位置づけとか、戦略とかって面白いなと思います。
もしよかったら時間があるときにでも企業価値評価してくださーい!
今、M&A関連で気になっている会社ですが、
・パナソニックとサンヨー
・レックスホールディング(am/pm)とローソン
・東京地下鉄と都営地下鉄(資料あるのかな?)
・トヨタとスバル
・エルピーダと台湾4社(グローバルマーケットにて)
・楽天とビットワレット
後は個別にですけど、
・JAL
・ユニクロ
あたりが最近気になってますね。
いずれにせよ延び延びになってしまっていてすいませんが、近いうちに飲みましょう。
みげるさん>>
返信削除コメントどもです。
統合によるシナジーの評価はかなり難しい感じがします。あまりきちんと調べた事はないですけれど、シナジーによって売上があがるという前向きな話よりは、間接部門の統合による販管費等削減といった所が大きい気もしますが。
そういやシナジーについては以下の記事が参考になると思います。
http://www.yuichiro-itakura.com/essay/kiss/kiss40.html
ここ最近、さぼり気味ですが、近いうちに新しい会社の分析をアップ出来そうです。ではまた近いうちに飲みましょうねー。