2010/04/04

シェル エネルギーシナリオ 2050 (その1)

石油会社のシェルはLooking aheadという形で数年ごとにエネルギーという視点からシナリオプランニングを行っており、最新のシナリオでは2050年までのエネルギー環境を描いている。

このシナリオを知る事が、企業価値評価において直接役に立つかどうかは分からないけれども、シェルというエネルギーメジャーがこうしたシナリオを描いている事と、シナリオプランニングの技法に触れる事は、この先の将来業績予測における一つの補助線的な役割になると考え、このシナリオの主要部分について翻訳を行ってみた。

尚、訳については十分な注意を払っているものの、誤訳が含まれている可能性については否定出来ないので、この翻訳の利用については各自のOwn Riskにてお願いします。
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Introduction

如何にして我々はこれから迎える、より先鋭で、ダイナミックに変化するグローバルエネルギーシステムに対して準備をすれば良いのか?

この質問は政府、ビジネス、市民活動における責任あるリーダーは記憶にとどめておくべきものである。これはすべての市民に関わる問題だからである。

グローバルエネルギーシステムは、我々の時代における幾つかの深いジレンマと結びついている。それはすなわち、開発に関するジレンマ:繁栄対貧困、信頼に関するジレンマ:グローバリゼーション対安全保障、産業化に関するジレンマ:成長対環境、といったものである。グローバルエネルギーシステムにおいては常に緊張関係が存在するが、今日、その緊張はますます強まっている。

1990年代、シェルにおけるシナリオプランニングにてTINA(There Is No Alternative:代替案は存在しない)という言葉を持ち出した。市場の自由化、グローバリゼーション、テクノロジーの進化という揺るぎない圧力は世界経済におけるエンジンとなり、これはすでにアジアの多くの人々を巻き込んでいる。1990年代におけるシェルのシナリオは、TINAの異なる側面について調査する為に役に立った。2005年、シェルではTINAに関連して地政学的な危機、信頼に関するシナリオを発表した。これらは9/11やエンロン事件の前兆となったものである。現在、シェルのSignpostにおいて述べられている通り、有力なエネルギー産出国と消費国の間におけるマインドセットと行動について重大な断層が生まれつつある。人口増加、経済成長はエネルギー供給、需要、及び環境に対するストレスを増大させる。全体から見て、我々はエネルギーシステムに関して非常に大きな混乱の時代に突入している。

それでは、その緊張関係や矛盾はシステムの中でどのような働きをしているのか?ここではTINAの次なる言葉を用いたい。TANIA(There Are No Ideal Answers:理想的な解決策は存在しない)である。

近代エネルギーシステムにおいては、その非常に大きな規模、複雑性を考えると、大きな慣性が働いている。新しいエネルギーインフラに対する設計、建設に要する非常に長い時間は、エネルギーシステムが内包する緊張関係は仮に解決できたとしても、簡単、もしくはすぐに解決できるものではない事を意味する。大きな変化が明らかになるには数年という時間が必要だろう。しかし表面下では、各要素がすでに動き出している。そこで、如何にしてその変化を認識し、組み合うかという事が問題となる。

シナリオは、このような変化をとらえ、異なる展望と可能性についての相互作用を考慮する上で役立つものである。またシナリオは、これらの可能性が姿を現した際、人々が備え、社会を形作り、そして繁栄する為にも役立つ。本シナリオではスクランブルとブループリントという、今後50年におけるエネルギーシステムについて二つのシナリオを作成した。

両シナリオともにチャレンジングな見方である。両方とも理想的な世界ではないが、現実可能なものである。これらのシナリオでは、変化の時代について述べている。誰もが、100年後のエネルギーシステムは今日のものとは異なるだろうという事を知っている。しかし、次の数十年においてこの変化はどのように生まれるのであろうか?これらのシナリオでは、政治、規制、テクノロジーの変化の速度、形態に関する重大な差異についてのインパクトを浮き彫りにさせている。

私はこれらが、読者にとって刺激を与え有益であると信じる。しかし、それ以上にこれらのシナリオにより、読者が持続可能なエネルギーの将来について準備をし、社会を形作る事に対して責任をもって参加する事を期待したい。
Jeremy B. Bentham
Global Business Environment Shell International B.V.

1 An era of revolutionary transition (革命的な変化の時代)
1:Step-change in energy use (エネルギー使用方法の段階的変化)
膨大な人口を持つ中国・インドを含め発展途上国は、産業化が進み、インフラが整備され、人・物の移動が増えている事もあり、経済発展の段階において最もエネルギー消費が激しい所に来ている。需要サイドの圧力は、代替エネルギーや、より効率的な消費を促す。しかしながら、これら一つだけではそのエネルギー需要の成長を完全に相殺するには不十分である。多くの人々の希望を失望させるような政策を取り入れる事で経済成長を抑制する事は回答にはならず、また政治的にも現実的ではない。

2:Supply will struggle to keep pace (供給ペースを保つ事は難しい)
2015年において、アクセス容易な石油、ガスの産出の成長率は、予測される需要の伸び率に対応できないであろう。一方、石炭は世界中に豊富に存在しているが、輸送の困難や環境破壊の点から、石炭の産出についても成長には制限がある。一方で、代替エネルギーとなるバイオ燃料等はエネルギー全体からみてより重要なポジションになるであろうが、エネルギー問題を完全に解決するであろう”特効薬”は存在しない。

3:Environmental stresses are increasing (環境からの圧力も高まっている)
もし、化石燃料が今後もエネルギー供給における今と同じ割合を保つ事が出来てかつ、需要の伸びにも対応できたとしても、CO2排出が人々の生活を大きく脅すであろう。化石燃料が適度に抑えられ、CO2排出の管理が効果的に出来たとしても、その先の道は非常にチャレンジングである。大気中のCO2レベルと望ましいレベルにとどめておく事も、ますます難しくなるであろう。

Preparing for the future (将来に向けての準備)
需要、供給、環境への影響という現在のエネルギー環境において最も重要な要因が大きな変化を迎えている事もあり、我々は革命的な変化と大きな混乱の時代に直面している。エネルギー価格とテクノロジーがこの変化を駆り立てるが、政治、社会的な選択も重要な要素である。この選択は、我々がこの起きつつある変化に対して如何に敏感であるかに依存する。特に、この先10年程は健全な発展と思われているものに我々は混乱させられるであると思われるからである。しかし、この平常通りと思われている事の水面下では、変化はすでに起き始めている。政府・企業はより長期的な代替ポジションを取り始めており、規制の枠組みが議論され始め、特効薬は存在しないものの、再生可能エネルギーといった新しいテクノロジーを組み合わせた開発が進み、既存のエネルギー供給システムとの統合が始まっている。また、二酸化炭素を捕らえ保存するといった新しいインフラが求められており、古い非効率なインフラは退役させる必要がある。

人々は、エネルギーの使用方法が、我々の最も大きな価値である、健康、コミュニティとその環境、子供の将来そして地球そのものを養うと同時に脅威にもなる事を理解し始めている。これらの深い個人的な希望と恐怖は、異なる集合的な結果に対してある意味では激しく相互作用する事もあり、また、新しいエネルギー時代を様々な道から導くものとなりえる。

Two possible worlds (二つの異なる世界)
この意味深い変化は不可避である事を踏まえて、如何に変化がおきるのであろうか?国家は単純に自らのエネルギー確保の為に奪い合い(Scramble)をするのであろうか?それとも、地域から国際間といった社会の様々なレベルにおける連合により新たな青写真(Blueprint)がうまれ、新しいエネルギーの枠組みが生まれるのであろうか?

2 Scramble (スクランブル)
Scramble - overview at glance (スクランブルにおける概要)
スクランブルシナリオは、国家のエネルギーに関する安全保障に焦点をおいている。とりわけ、自国及び同盟国における近未来のエネルギー保証の必要性といった目の前にある圧力が意思決定者を動かしている。国家の注意は、二国間協議や地元の資源開発にむけたインセンティブといった供給サイドから見てすぐに手に入る物に自然と向けられる。石炭やバイオ燃料の成長も特に重要である。

レトリックは増えるものの、気候変化やエネルギーの効率性向上に向けた実際の行動は未来に追いやられ、注目の順序は供給、需要、気候変動となる。需要サイドの政策は、供給の限界が明らかになるまで特に先には進まない。同様に、環境に関する政策も、大きな気候変化に関する何かが政治的な反応を起こさない限りは真剣には取り組まれない。気候変化に関する何かが起きると、それは生まれつつ圧力にたいして手遅れになりがちでかつ激しい反応を呼び、それはエネルギー価格の高騰や激しい変動という結果になる。これは、力強い経済成長全体に対して一時的な減速に繋がるであろう。

大気中のCO2濃度の成長は、この期間の終わりには適度な所になるであろうが、長期的には550ppmを大きく超えるものになる。経済活動とイノベーションの一部は徐々にかつ究極的には気候変化のインパクトの対応準備に向けられるであろう。

2.1 Fear and security (恐怖と保証)
スクランブルシナリオにおける主な登場人物である国家は、エネルギー政策を供給面から注目する。なぜならばエネルギー需要を抑える事は、つまり経済成長を抑える事は、あまりにも政治的に不人気な手段であり実行する事は出来ないからである。国際的な協力体制が不在である事は、個々の国々が不本意ながらも、結果的に各々の経済成長にダメージを与える一方的な活動をする事を意味する。結果としてこの事は、石炭、重油、様々な地域による基準や技術の集まりとなるバイオ燃料や他の再生可能エネルギー等を含む国家独自にて入手可能なエネルギー確保に関する開発に向けた、比較的まとまりのない範囲での国家による開発指令や開発の為のインセンティブとなる。

国際間において、スクランブルシナリオはエネルギー産出国と消費国の間における二国間取引の世界となる。国家は国内のエネルギー会社を通じて、エネルギー供給に関して如何によい条件を引き出すか競争を行う。エネルギー消費国間においては強力な競争要素があるが、利害が一致した場合は協力関係となる。このような世界において、エネルギー会社は仲介人としての役割を果たすが、その役割は政治的なメカニズムの中に埋没していく。グローバリゼーションはこの国家間の緊張を深刻化させ、政策立案者をエネルギーや気候変動に関する国際的な協力関係を築く為の行動を行う必要性から背ける事になる。

ビジネスサイクルの変動は継続するが、エネルギー価格は一般的に強気となる。これは供給サイドにおける本質的な圧力だけではなく、2004年のエネルギー価格高騰から、世界経済はエネルギー価格の上昇を比較的容易に吸収できるとOPECが学んだ事にもよる。OPEC加盟国の経済的利益の観点から、OPECは石油価格下落の初期段階から供給を絞るようになる。価格が高止まりする事と供給が増えない事から、エネルギー輸入国にとって”有利な条件”とは供給が中断しないと保証する事を意味するようになる。

スクランブルシナリオでは、主な資源保有国がルールを受け入れるのではなく、ルールを作る側になる。彼らはその拡大する力を国際政策に、 特に彼らが内政問題と主張する人権や民主主義といった事柄において、 影響を与えるような形で行使する。石油産出国との間に”有利な条件”を作り出した国家は、ようやく作り出した条件を駄目にするような事は望まず、その結果国際関係は継続的な繁栄を望む為の競争となり、継続可能な国際間コミュニティーをつくり出すような動きとはならない。

異なる国々の間では、経済、エネルギーに関するパフォーマンスに非常に大きな差が存在する。発展途上国においては経済的発展を遂げる為に必要なエネルギー調達に邁進する一方、先進国においては既存のライフスタイルを維持する為に、エネルギー消費形態を如何に対応させていくか問題を抱える。国家レベルにおいてエネルギー確保に邁進する行為は、国家は相互依存であるという不可避な現実が障害となる。共有されたエネルギー伝送構造と同様に、経済的・政治的に複雑な繋がりは、ある国のエネルギー安全保障は他国の協力を必要とする。不可避として存在する問題は、 国際間における枠組みの欠如と多国間制度が弱い事から、徐々にまた非効率に扱われる

エネルギーシステムにおける圧力の増加から、ニュースメディアは定常的に世界のある部分で起きているエネルギー危機に関する報道を行う。変化の早い社会的ストレスを抱えている政権は、国民からの正当性を簡単に失うようになり、幾つかの国では劇的な政権変化も起きるであろう。幾つかのケースにおいては、エネルギー需要を抑える為の誤った判断から条件反射的に補助金等を削除した事が、上記のような大きな変化を起こす要因となろう。そのような大きな混乱にも関わらず、この初期の期間においては大部分の人々は物質的には発展を経験するであろう。全体として、2025年までの世界経済は継続的な発展を遂げるであろう---主に石炭に由来して。

2.2 Flight into coal (石炭への逃避)
エネルギーに関する懸念事項が増す中、低コストのオプションとして石炭をできる限り活用する事が政治的、市場的にも好まれるようになる。エネルギーに関する自立という一般からの圧力に対する反応や、石炭の活用は自国内に雇用を創出する事等から、大きな経済圏を持つ国々の政府はこの自国内で得られる資源を活用するようになる。2000-2025年にかけて、世界の石炭市場は倍増し、2050年にはおよそ2.5倍になるであろう。

しかしながら、環境保護団体が忌憚なく指摘するように石炭の活用は問題がある。米国やその他の豊かな国々では、新たらしい石炭工場の建設を行うたびに抗議と抵抗運動が発生する。中国では、地方の環境悪化問題が社会不安を引き起こす。また、中国の鉄道インフラは大量の石炭を国内に輸送する、もしくは石炭をオーストラリア、インドネシ等から輸入するには問題を抱えており、その為、鉄道インフラを大規模かつコストをかけて改善する必要がある。気候変化についての問題は、中国とアメリカにおける石炭産業の拡大と紐ずけられる。石炭に対する抗議が広がるものの、政府は経済成長にダメージを受ける事を恐れて、二酸化炭素税、二酸化炭素トレード、効率的な委託機構といった温室効果ガスを管理する為の仕組み作りにはなかなか取り組まない。

石炭発電による需要を抑える事を目的として、幾つかの国では原子力発電の増加が重要であると結論づけるようになる。石炭とは反対に、原子力発電は世界規模で素早く展開をするには最も難しいエネルギー源の一つである。ウラン鉱山および原子力発電所の開発には時間を要する。核廃棄物の廃棄問題がさらに問題に難しさを加えている。自国にて核施設を持ち運営している幾つかの国においても、非常に大きく、かつ長期的な財務的リスクを有する原子力発電所の建設を企業が行うには、政府の重要なサポートが必要となる。加えて、核兵器拡散への懸念による核技術を友好国以外に提供する事への躊躇いから、スクランブルシナリオにおいて核エネルギーがエネルギー構成に占める割合は本来のポテンシャルに比べて小さいものになるであろう。

2.3 The next green revolution (次世代の緑の革命)
農業に関する大規模なロビー団体は先進国においてすでに強力であり、本シナリオの初期においてはバイオ燃料に対する大きな期待が存在する。これは液体輸送燃料の急速な成長に結びつくものの、同時に予期しない結果にも結びつく。第一世代のバイオ燃料は食料生産と競合し、世界的に、特にトウモロコシを食料使っている地域にて、食料市場の値上がりに繋がる。また、EUのように食料生産のポテンシャルが不十分な地域では食料不足を輸入で補い、それが間接的に貧しい国々が、ヤシ油、トウモロコシ生産の為に熱帯雨林や現地の生息環境の大部分を破壊する事に繋がる。土地の使用方法の変化は、地中に保存されていた大量のCO2が大気中に開放される事も同時に意味する。

これらの予期しない結果は、次世代のバイオ燃料が2020年までに確立される事の一因となる。次世代バイオ燃料は、食料生産の際に発生する茎や葉等の木製の廃棄燃料を用いている。継続性を推進する為に、第一世代、第二世代のバイオ燃料に対して認定システムが作られる。第二世代のバイオ燃料の主な利点は、特に熱帯地域以外においてエネルギー生産が高い事にある。主なOECD国は温暖地域にある事から、これらの国々では第二世代のバイオ燃料に合わせて経済活動を結びつける事に熱心になるであろう。

2.4 Solutions are rarely without drawbacks (難点がない解決策はなし)
オイルサンド、シェイル、石炭といった毛色の変わった石油がスクランブルシナリオにおけるエネルギー安全保障の手短な解決策として挙げられたとしても、それらにもネガティブな結果が存在する。2010年代を通して、投資家はますます多くの資金を新たな形の石油開発プロジェクトに投入し、それが供給圧力に対する重要な役割を果たすであろう。それにもかかわらず、これらの開発は水資源、環境保護ロビー団体が、開発に対する環境への影響を懸念して反対するようになる。これらの反対運動は、究極的には最もよくマネージメントされたプロジェクトに対しても政治的な反動を呼び起こすであろう。

供給サイドによるアクションは、需要増に対しては不十分もしくは不人気である事が証明された事により、政府は最終的にエネルギー需要を和らげる方法に踏み出す。しかしながらすでに需要圧力は予期せぬ結果と共に臨海値に達している。例えば、新たな建設に関する厳しいエネルギー効率基準の突然の導入は、業者や官僚が新しい規制に対応できるまで新たな開発を遅らせる事となる。幾つかの例では、この事が全体のエネルギー効率向上のトレンドを遅らせる。

スクランブルシナリオにおいては、典型的な3つのパターンが生まれている。最初は、エネルギー供給がタイトになった事に対応する為に国家は、石炭や炭化水素、バイオ燃料に逃避する。次に、石炭産出が成長する事で、石油やガスはメインテナンスされなくなり、全体における供給危機が起こる。最後に、政府はこの事に対応する為に、急激かつ突然の国内におけるエネルギー価格上昇、もしくはバリューチェーンの混乱、経済活動に対する重大な転位を伴う個人移動に対する厳しい規制を課す。2020年までに、エネルギー経済における様々なエリアで繰り返し起こるこの非常に厳しい3つのステップは、一時的な世界経済の減速という結果に繋がるであろう。

2.5 The bumpy road to climate change (気候変動への浮き沈みの激しい道)
主に新興国において経済成長に焦点を当てたままにしておく事は、気候変動に関する議論を置き去りのままにする事となる。活動家による抗議が増えつつあるも、警告が多すぎる事により一般の人々は警戒慣れしてしまう。気候変動に関する国際的な議論は、豊かな先進国と、貧しい発展途上国との間における対立する立場同士の耳を貸さないイデオロギー的な対話により身動きが取れなくなる。これにより大気中のCO2濃度はますます高まっていく。

生まれつつあるエネルギー供給、需要間の緊張は、レトリック的に述べている懸念に対して真に対応せざるを得なくなるまで、政治家が対応を行うのが難しいであろう。気候変動に対して対応を行う事は、経済に対する更なる圧力と受け止められ、対応に要する事柄の質から、誰もが最初に対応を行うというリスクに対して準備が出来ていない。

一方で、起きつつあった経済成長に対する憧れが突然失望に変わった途上国においては、政治的な圧力が強まる。国際的な協力関係についても同様に緊張状態に置かれる。ロシア国内における石油の使用は、東ヨーロッパの成長を抑え、低所得のアフリカ諸国では石油に対するアクセスに苦労するようになるであろう。

最終的にこの行動の欠如が、極端な天候や供給縮減に対する政治的に日和見主義な非難、もしくは政治的目的を持った反射的な反応を起こしやすい状態を作り出す。これらの反応は手遅れという事だけではなく、需要側に対して違いを起こすには小さ過ぎるものである。幾つかの国々が高炭素エネルギー資源の開発に対して一時的なモラトリアムを設定するなど、混乱を起こすほど過剰反応を呼び起こすケースもある。

2.6 Necessity - the mother of invention (必要性 - 発明の母)
変化は必要に迫られ起こるのだが、エネルギーシステムにおける大規模な変化が必要な事から、方向転換には10年を要する。国内におけるエネルギー価格高騰と、政府によって課された要求水準の非常に高い基準は、エネルギー効率における重要な進歩を引き起こす。最終的に、バイオ燃料、風力、地熱ソーラーといった国内で開発された代替エネルギー供給は、以前に比べて大きな役割を果たすようになる。イノベーションを起こす為に、非常に大きな刺激策を行う事で厳しい時期を乗り越えた新しいエネルギーセクター等、2030年には健全な経済発展を取り戻す。

エネルギー構成全体における炭化水素燃料の割合が減少していく事、代替エネルギーの割合が増えていく事、エネルギー効率が改善される事すべてが、大気中のCO2濃度を適度なレベルにしていく事に貢献する。しかし、結果として起こる経済発展が再び始まる事は、CO2排出を引き起こす力強いエネルギー消費が再び始まる。また、CO2濃度はすでに高い状態にある。エネルギー安全保障と気候変動の緩和の為に新たな国際的なアプローチの必要性について世論の一致を見るようになるが、2015年までにそのような仕組みがもし出来ていたとすると、世界は20年以上遅れている事になる。経済発展は多くの人々に富を運ぶようになるが、規制がはっきりしない事もしくは、国際的な合意がない事から、温暖化ガスに対する対応についての市場からの反応は鈍い。経済活動において、増えつつある一部とイノベーションは究極的に、気候変動のインパクトに対応する為の準備に向けられるようになる。初期の段階において厳しい判断を避けた事により、国家は2050年を超えても厳しい現実に向かい合わなければならなくなったという事を認識するようになる。





シェルエネルギーシナリ2050(その2) へ続く

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